職員食堂に行きづらい…「市役所の同僚男女」に一等3000万円 昭和56年当時の当せん金額が抑えられていたのはなぜか【宝くじ異聞】
第1回【昭和50年代に3000万円当せん「市役所の同僚男女」…「言うなと言ったのに」「自分から声をかけてきた」言い分が異なる納得の理由】を読む
今年もサマージャンボ宝くじとサマージャンボミニが発売となった。すでに購入された方もこれからという方も、考えておくべきは“当せん後のこと”かもしれない。
日本全国の宝くじにまつわる騒動に注目する「宝くじ異聞」。今回はとある市役所で同僚の男女、SさんとNさんが一等3000万円を当てたエピソードの【後編】をお届けする。2人そろって「一部を市に寄付」と言う納得の理由とは。また「職場の人間関係を損なう」として当たりくじを豪快に燃やした別件の顛末と驚愕の後日談とは――。
(全2回の第2回:「週刊新潮」1981年7月9日号の再録。部署名、役職名等、すべて掲載当時のものです)
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【写真】当せん騒動の2日前には「深川通り魔事件」が…緊迫する現場の様子
「山分け」の約束を巡り大喧嘩
【第1回からのつづき】
2年前、秋田の方で理髪店と常連客が仲よく宝くじを買うまではよかったが、常連客のくじばかりが1250万円の大当たりをしたために、一騒動持ち上がったことがある。理髪店が「当たった時は山分けにすると約束したはず」といえば、常連客は「そんな約束は知らん」と突っぱねて、大ゲンカになったのだ。
また、長野県では1000万円当たった工員が職場の人間関係を損なうといって、その当たりくじを燃やしたはいいものの、あとでそれはカラくじだった可能性が強いと新聞に指摘されて、総スカンを食ったこともある。
幸い今回当たった市役所のお2人、SさんとNさんは賞金を折半することで納得したから、トラブルは生じなかった。しかし、もしNさんに3000万円を独り占めしたいという気持ちが起こっていたら、紛糾する条件は十分にそろっていたのである。
“当たりくじ”焼き捨て事件のその後
宝くじを焼いた工員・Kさんの後日談をお伝えすると、引き換え期限が過ぎて、換金されなかった一等くじが1本残った。とすると、それが燃やしてしまった1枚だったとも考えられるが、このくじは群馬県で発売されたもの。東京都内で買ったというKさんの主張とは合わず、結局、決着がつかぬまま現在に至っている。
ただ、彼が燃やしたのはホンモノだったという見方も根強くあって、当時の上司はこんな話をする。
「その後、聞いたところでは、群馬県の宝くじ屋さんが都内に持ってきて売ったそうです。それから、滋賀県のある人から電話があり、“自分も渋谷で宝くじを買ったが、Kさんと一番違いだった。もしKさんの役に立つなら証言してもいい”といっていました」
〈“焼き捨て”はカラくじ?〉という新聞記事が出て以後、Kさんは、町を歩けばつばを吐きかけられたり、ジュースの空き缶を投げつけられたりした。彼が燃やしたのがホンモノだったとしたら、いわれのない被害を被ったことになる。彼は昨年の秋に勤め先を辞めている。職場の人間関係を損なうからといって取った彼の行為が結局、裏目に出たのである。
人目が気になり過ぎる後遺症
先の市役所においても、Kさんの場合ほど顕著でないにしても、微妙な反応は起きている。S氏がいうには、
「今まで仕事で一緒にクルマに乗っていた人とも、何となく乗りづらくなりましてね。周りの人の目が気になるんですよ。すぐ“あいつは宝くじに当たったやつと仲よくしとる”などというでしょう。それからは、職員食堂へも何となく行きづらくなりましてね。あれ以後、行ってないんですよ」
一方、Nさんは騒ぎの翌日、婦人会のサークルで近くの温泉地に遠足に出かけたのだが、
「ほかの人たちに宝くじのことを気取られないようにと気を張ってましたから、帰ってきた時はグッタリ疲れちゃいました。温泉にも入らずに帰ってきましてね。実は月曜の日も虫歯が痛くてホッペタがはれちゃいましてね。ふだんだったら休むところなんですが、こういう時に休んだら、金が入ったら役所も休むのかなんていわれるに決まってるでしょう。だから、無理して役所に出たんです」
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