職員食堂に行きづらい…「市役所の同僚男女」に一等3000万円 昭和56年当時の当せん金額が抑えられていたのはなぜか【宝くじ異聞】

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批判をかわすためにも寄付は必須か

 彼女は10年前に夫を亡くし、一人息子は東京の大学に入っていて、現在は一人暮らし。1500万円の使い道については、

「いまだに何に使おうか迷っています。増築した借金が4、500万円あるのでその返済と、市にも寄付したいと思ってます」

 一男一女の父であるS氏のほうも使い道は同じようなので、

「数年前、役所から500万円借金して増築したもんですから、その返済にまず充てたいと思います。それから、こういう騒ぎで役所にも迷惑をかけましたから、何百万円か、ある程度まとまった額を市へ寄付したいと思っています。あとはご先祖様に感謝するという意味で、いい仏壇でも買おうと思っています」

 市民の間には、「市役所の連中は仕事もしないで宝くじ買って遊んでばかりいる」という声が上がっている。そういう批判をかわすためにも、寄付は欠かせないのかも。

一等賞金はだいたい住宅購入資金とイコールだった

 今回のお2人の例を見ても分かるように、一等賞金の使い道としては、当せん者の75%がマイホームに使っている。その際に3000万円という賞金額はいかほどの使いでがあるものなのか。首都圏では中クラスのマンションを買うのがせいぜいで、とても「ジャンボドリーム」ということにならない。

「昭和22年に初めて100万円の宝くじが生まれましたが、当時その賞金で住宅1棟、自動車、家財道具一式、金の指輪、ダイヤモンド、背広と訪問着を買ってもまだ20万円残ったそうです。昭和43年に賞金は法律で定められている最高限度(単価の10万倍、1枚100円で1000万円)までいったんです。

 当時ですと、1000万円で50坪の土地に20坪の建物の家が買えました。一等賞金はだいたい住宅購入資金とイコールだったんですが、ニクソン・ショック、石油高騰で土地代が一気に上がってから、狂ってしまった。いま3000万円では首都圏でマイホームは買えませんわね」(第一勧銀[※現在のみずほ銀]宝くじ部)

 スペインには一等賞金5億7000万円の宝くじが売られている。そこまでいかなくても、欧米では1億、2億の宝くじはザラにある。

実は「一時的なもの」として始まっていた

 日本にもせめて1億円の宝くじぐらいあってもよさそうに思えるが、お役所は射幸心(しゃこうしん)をあおるとの理由で高額賞金には消極的。

 宝くじと射幸心を切り離すことなど、およそできるとも思えないのに、自治省(※2001年に総務省と統合)地方債課の宝くじ担当者はいう。

「戦後、国と地方自治体の両方で宝くじを出していましたが、射幸心をあおるという理由で、国の宝くじ(※政府宝くじ)は昭和29年に廃止されました。その時の閣議決定で、地方財政の現状その他のため当分の間これを継続するが、将来、適当な機会においてなるべく早く全廃することをメドとして運営するとなっていて、これが今でも生きているんですよ。今のところ、宝くじの賞金額を上げることは検討していません」

 1億円どころではない、時代の趨勢は宝くじ全廃の方向に向かっているんですと。毎度毎度、4割もの寺銭を吸い上げておきながら、よくまあいうよ。

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 一体なぜ「単なる同僚」の2人が宝くじを共同買いしたのか――。第1回【昭和50年代に3000万円当せん「市役所の同僚男女」…「言うなと言ったのに」「自分から声をかけてきた」言い分が異なる納得の理由】では、購入までの経緯と当せんが判明し市役所が騒ぎになった状況などを伝えている。

デイリー新潮編集部

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