タイパ世代の若者はなぜ「数学は割に合わない」と考えるのか…マジメな会議より、ムダ話から「斬新な企画」が生まれる理由

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「緊張感のある会議」からは生まれないアイディア

 私はある時、大学の研究室で教授とお菓子を食べながら団らんしていたら、いつの間にかゼミで実施する企業訪問や合宿など、充実した課外活動を構想できたことがあります。もちろん、それらは全て実現して、学生も大満足してくれました。レストランでパスタを食べながら、初対面にしては多様な雑談をして盛り上がった人が、今では私の秘書として立派に活躍してくれています。そして、本書の出版企画も、出版社の方とカフェで何気なく業界の話をしていたところから、私が思い切って発案して始まり、今日までたどり着きました。

 このように、一見ただ雑談するだけで無駄な時間に思えそうな場から、希望に満ちあふれる企画が突然生まれるものなのです。

 綿密な資料を準備して、司会進行役がしっかり進めていく会議は、緊張感があって会議全体が締まります。しかし、その緊張感が「単なる思い付き」や「突拍子もない発想」を発言する妨げになってしまいがちです。私が記憶する限り、格式高い緊張感のある会議において、革新的な発想や斬新な企画が生まれたことはほとんどありません。新しい発想や新しい企画、その素材は雑談の中に眠っていると言っても過言ではありません。

 まさに、無駄な時間は発想の宝庫です。時間対効果で効率を追究するのも1つの過ごし方ですが、ゆとりを持って無駄な時間を過ごし、人生を豊かにする素材を探し当ててみてはいかがでしょうか。

和辻 龍(わつじ りゅう)
哲学者の和辻哲郎を曾祖父に持つ。2010年、明治大学大学院修士課程(理工学研究科電気工学専攻)修了。2017年、独Clausthal University of Technology博士課程研究員任期満了。ドイツ滞在中は研究員として大学に勤務する傍ら、現地の学校現場に身を置き、生徒と教師、両方の立場を経験。帰国後も教員として中高一貫校に勤務する。著書に『こんなに違う!?ドイツと日本の学校』(産業能率大学出版部)。近著に『うまくいく思考の転換』(産業能率大学出版部)。

デイリー新潮編集部

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