「AI教育は“脳が怠けて抜け出せなくなる”」 世界的権威「MIT」が発表した論文の驚くべき研究結果
言わずと知れた名門研究機関、米MIT(マサチューセッツ工科大学)メディアラボが、衝撃の研究(*)を発表した。生成AIを教育現場で利用する際、学生の認知機能にどのような影響を与えるかを調べたこの研究は、生成AIを活用してエッセイを書いた被験者は「8割が何を書いたか思い出せない」「脳が怠けている」ことを科学的に明らかにしたのだ。日本でも、東京都立の学校が「都立AI」の運用を始めるなど教育現場で生成AIの活用が本格化しているが、MITからのメッセージは届いているだろうか。(文=湯浅大輝)
(*)Your Brain on ChatGPT: Accumulation of Cognitive Debt when Using an AI Assistant for Essay Writing Task
URL:https://arxiv.org/pdf/2506.08872
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研究者たちが本気で心配する「教育の未来」
研究結果について紹介する前に、この研究に携わった脳科学者や言語処理の専門家ら8人による論文(査読前)の序文(Introduction)などを読んでみよう。彼らが生成AIの教育現場での活用について、どんな危機感を持っているかが分かるからだ。
「生成AIの登場は、私たちの生活・仕事・学びのあり方を根本から揺さぶっている。特に教育現場では、生成AIの『自律的』『対話的』『個人に寄り添う』という機能が、生徒の能力開発に役立つと期待されている。
ところが我々が『生成AIを活用してエッセイを書く際の脳の認知機能の変化』を調べると、憂慮すべき結果が明らかになった。生成AIを使った学生は、『(科学的に)認知機能が萎縮』していた可能性があるのだ」
続けて、
「研究では生成AIの利用が問題解決能力や意思決定、情報を能動的に精査する能力も損なう可能性が示唆された。生成AIの『個人のニーズに寄り添い、人間が書くように、文脈に沿った文章を瞬時に生成する』という出力(答えを生成する力)に甘えるばかり、学習対象について知悉する・物事を批判的に考えるといった学びにおいて最も重要な態度が身に付かなくなる可能性があるのだ。
教育現場で生成AIへの依存が進めば、全ての学びをAI任せにする学生が増え、『怠惰』『先延ばし』といった悪癖が身に付く危険がある。効率を求めるあまり、なんでもAIに聞いて、知った気になる学生が急増するという意味だ」(以上、序文などより)
おどろおどろしい表現だが、研究者たちは結果を見て、生成AIの利用が脳に及ぼす影響に身震いしたのだろう。彼らがこれほどの自信(ある意味で)を持って生成AIの教育利用に警鐘を鳴らすのはなぜだろうか。
日本の教育現場でも進むAIの導入
日本の教育現場でも文科省が旗を振る「GIGAスクール構想」を筆頭に、デジタル教育の是非については意見が割れている。そんな中、2025年5月から、東京都は全都立学校を対象に、「都立AI」を展開し、授業や校務などで活用していくという。
不適切なやり取りのフィルタリングや入力内容の保護など、セキュリティ面では注意が行き届いているようだ。一方、生成AIを教育に活用した時、子どもの能力開発に悪影響を与えないか、十分に考慮する必要がある。実際、今回のMITの論文でも「まだ認知能力が発達していない子どもに生成AIを使わせることは慎重に」との指摘がある。
〈有料記事【都立校も導入「AIの教育活用」は“脳が怠けて抜け出せなくなる” MITが発表した衝撃の研究結果とは】では、研究内容と、その驚きの結果について詳しく解説している〉



