遅刻した浜田雅功を「ジジイ」呼ばわり 衝撃的な「事件」となったハマ・オカモトとの親子共演

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本物のプロ同士の共演

 音楽活動にも意欲的に取り組んでおり、小室哲哉とのユニット「H Jungle with t」名義で「WOW WAR TONIGHT ~時には起こせよムーヴメント」などのヒット曲を放った実績もある。その芸能人生はまさに大衆的なエンタメの王道を生き抜いてきた歴史そのものであり、いまだ現役として多くの番組を支えている。

 一方、ハマ・オカモトは、父親とは異なるフィールドである音楽の世界で、自らの才能を証明してきた人物である。OKAMOTO’Sのベーシストとして10代でメジャーデビューを果たし、以降、抜群のグルーヴ感と安定した演奏力で業界内外から高く評価されてきた。星野源をはじめとして数多くのトップアーティストのライブやレコーディングに参加しており、その技術とセンスは折り紙付きである。

 ハマはデビュー当初は「浜田の息子」であることを公言せず、自らの力だけでシーンを駆け上がってきた。親の七光りというレッテルを避けるためか、あるいは親の方針なのか、公の場では親子関係について語ることを避けてきた。芸能記者やファンの間では「実は親子である」ということは半ば公然の事実だったが、2013年にラジオ番組で一度だけ共演したことはあったが、テレビやライブでは正式に共演することは一度もなく、共演が現実に実現することはないのではないか、という空気すらあった。

 そのような中で、今回の音楽フェスにおける共演は、まさに衝撃的であり、ある種の「事件」として受け止められた。しかも、その様子がテレビ番組で放送されたことで、2人の姿を目の当たりにした視聴者は強い感情を抱いた。共演といっても、バラエティ番組での軽い絡みではなく、浜田が歌を歌い、そこにプロのミュージシャンとしてハマ・オカモトが加わるという形での真剣勝負だった。そのことが、単なる身内のじゃれ合いではない、本物のプロ同士の共演として、多くの人の胸を打ったのである。

 また、この共演が今というタイミングで実現したことにも意味がある。浜田雅功はすでに60歳を超え、芸能生活も終盤に差しかかっている。一方のハマ・オカモトも30代半ばとなり、若手から中堅へと立場を移しつつある。親子というよりは、同じ表現者としての敬意が成立する年齢になったからこそ、共演が可能になったという側面もあるのではないか。

 実際、ハマ・オカモトは1年前に同じフェスで出演依頼を受けていたのだが、そのときは断っていたのだという。1年経って何らかの心境の変化があったのかもしれない。しかも、浜田が休養から明けて復帰した直後のイベントだったという点でも、見る人にとって感慨深いものになった。

 親子であることをほとんど話題にも出さず、別々の道を歩んできた2人が、大観衆を前にして音楽という手段でつながり、初めての共演を果たした。それは長年浜田を見守ってきたファンにとっても、信じられないような奇跡的な出来事だったに違いない。

ラリー遠田
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)など著書多数。

デイリー新潮編集部

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