「インドの事故以外にもこんなに…」 航空機事故相次ぐ「ボーイング」は「エアバス」と何が違うのか

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 インドで起こった航空機墜落事故はまだ記憶に新しいが、昨年末の韓国での事故や、今年40年の節目を迎える「日航機墜落事故」など、やたらとボーイング機の事故が目立つのはなぜなのだろうか。世界の航空機市場を寡占する2社の違いを探った。
(戸崎肇/桜美林大学航空・マネジメント学群教授)

 ボーイングの苦境が続いている。いや、存亡の危機に瀕しているといってもいいだろう。 その経営の在り方について、多くの告発の声が上がっている中で、大事故が発生したからだ。

 6月12日午後、インドから英国に向けて出発したエア・インディア171便は、推力を得ることができず、離陸直後に近隣の建物に墜落。地上の犠牲者も含めて270人以上が死亡する大惨事となったのである。

 今回墜落したのはボーイングの最新鋭機であるB787型機である。ちなみに同機を世界で最初に発注したのはANAであり、2011年9月に1号機を受領している。

 この機材の売りの1つは軽量で燃費がよいことだ。そして、その軽量化を可能にしたのは日本の東レが開発したカーボンファイバーであった。機内に加湿器も設置されるなど、乗客にとってもより快適なフライトを楽しむことができるようになった。ボーイングにとっては「スター」といえる機材である。

 現時点では墜落の原因が何であるか全く不明であるが、もしB787に何か重大な根本的問題があるということになれば、ボーイングにとっては極めて大きな痛手となりかねない。

 ボーイングの苦境は日本にとって他人事とはいえない。日本は、航空機そのものの製造では苦戦しているものの、米国の航空機メーカーに多くの部品を供給しているからだ。特にB787には上記の東レを含め、日本のメーカーが全体の35%の部品を供給している。B787に構造上の問題があるとなれば、生産体制がストップし、日本の部品メーカーの受注も途絶えることになる。

相次ぐボーイング機の事故

 近年、ボーイングの経営について強く批判されているのは、経営陣が利潤を追求しようとするあまり増産体制を強化し、生産現場に無理な労働を強いているという点である。ボーイングの伝統であった技術へのこだわりという文化が消失し、安全性が軽視されるようになったと告発する文献も出てきている(出典:ピーター・ロビソン著、茂木作太郎翻訳『迷走するボーイング』(並木書房、2024年11月)ほか)。

 実際、今回のエア・インディアの事故以外にも、近年重大な事故が起こっている。

 2018年10月、インドネシアのスカルノ・ハッタ国際空港を発ったライオン・エア610便(B737 MAX-8)が離陸直後に墜落し、乗員乗客189人全員が死亡した。

 直近では、2024年1月、アラスカ航空が運航していたB737 MAX-9が米西部オレゴン州の空港を出発後、飛行中に胴体側面のパネルが吹き飛び、機体に穴が開いた状態で緊急着陸した。その結果、乗客乗員177人のうち、8人が軽傷を負った。

 さらに同年12月の、チェジュ航空2216便(B737-800)が韓国の務安国際空港への胴体着陸に失敗して炎上し、乗員乗客181名のうち179名が死亡した事故も記憶に新しいだろう。

 ボーイングの事故が多いかどうかは、単にそのシェアが大きいために多く見えるだけだという見方もあり、見解が分かれるところであるが、現実に事故が発生しているということは先の告発との関連で注目されるべきであろう。

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