自分の嫌な面が見えてしまう相手とは結婚しないほうがいい 京大名誉教授が語る「理想の結婚」論

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芸人たちが次々結婚

 6月26日、「南海キャンディーズ」山里亮太がMCを担当する情報番組「DayDay.」(日本テレビ系)に、妻で女優の蒼井優が生出演したことが大きな話題となった。二人が「共演」するのは、2019年の結婚会見以来。

 いまどき芸能人でも結婚会見をするケースが珍しいことに加えて、長時間にわたり、互いへの愛情を隠さずに語る姿は当時、絶賛を浴びた。それから6年たち、なおも二人の仲むつまじさが伝わってくるやりとりを見て、心温まる気持ちになった視聴者は多いようだ。

 そんな“同業者”の姿を見てというわけでもないだろうが、このところお笑い芸人の結婚発表が続いており、一種のラッシュ状態となっている。この1カ月ほどの間で見ると、「令和ロマン」の松井ケムリ、「ライス」の田所仁、「バイきんぐ」の小峠英二、「デニス」の植野行雄、「コットン」のきょん、などなど。

 お笑い芸人の場合、オンとオフのギャップが大きい人が珍しくないという。外でテンションを上げる分だけ、家庭ではクールダウンする必要がある、というのは道理だろう。そうした安らぎの場を持つことは、ハレの場でのエネルギー源になるだろうし、そうならない場合、結婚生活は維持できないかもしれない。

 芸人に限ったことではない。男性でも女性でも、結婚によって仕事、人生がより充実していく人もいれば、逆にどんどん悪いほうに向かう人もいる。その違いは何か。

 気楽な独り暮らしのためのサービスが充実している現代において、わざわざ他人と暮らすという面倒なことをする意味はどこにあるのか。

 京都大学名誉教授で歌人の永田和宏氏と歌人の河野裕子さん(2010年に他界)は、おしどり夫婦として有名な存在。永田氏には、ドラマ化された『あの胸が岬のように遠かった 河野裕子との青春』をはじめ、夫婦の愛情を描いた作品が複数ある。その永田氏は、著書『知の体力』で「結婚の意味」について、分かりやすい言葉でつづっている。

 若い人に向けて語られている「意味」は永田氏自身の実感に基づくものだが、山里・蒼井夫妻のようなカップルのイメージとも通じるところがありそうだ。

 芸人に限らず、これから結婚生活をスタートしようとする人が読んでおいて損はない、その「結婚論」に耳を傾けてみよう。

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「自分が輝く」相手と結婚を

 先に私は、相手の対応によって、自分が全開できることもあれば、逆に見る影もなく萎んでしまうこともあることを書いた。できれば、自分の可能性を開いてくれる存在と向かい合いたいものである。そんな自分をもっとも素晴らしい存在と思わせてくれる存在こそが、愛する相手であってほしい。

 一緒にいたいと思う心情は、単に相手が美しいとか、頼りになる逞しさをもっているからといったものではないだろう。愛情の第一歩は、一緒にいるのが楽しい、一緒にいることそのものが大切な時間として意識できる、そんな単純な感情であろう。それはそのままでいいのだが、もう一つ、一緒にいることによって、自分のいい面がどんどん出てくると感じられる相手こそが、ほんとうの意味での伴侶となるべき存在なのだと、私は思っている。

 一緒にいると、どうしてもその人間の欠点ばかりが見えてくるという人は確かにいるものだ。あるいは相手の欠点ではなく、一緒にいるとどうにも自分の嫌な部分・側面が見えてしまう、そんな相手もあるものだ。そんな存在とは、一緒にならないほうがいい。一緒にいると相手のいい面に気づく、そのいい面に気づく自分がうれしく感じられる。その人と話していると、どんどん自分が開いていく気がする。お互いにそんな存在として相手を感じられるような関係こそが、たぶん伴侶と呼ぶにふさわしい存在なのに違いない。

 どんな大学に入学しても、どんな賞を獲得しても、どんな大会に優勝しても、どんな素晴らしい成功を収めても、心から喜んでくれる人がいなければなんの意味も持たないのとちょうど逆に、ほんのちょっとした自分の行為を心から褒めてくれる存在があるとき、自分がそれまでの自分とは違った輝きに包まれているのを感じることができる。

 私はこの文章を、若い人たちを念頭において書いてきているが、ぜひそんな一人に出会うことによって、それ以前には自覚できていなかった「輝いている自分」に出会ってほしいと願っている。心から愛することのできる人を得ることは、すなわち自分のもっともいい部分を発見することなのである。

 愛する人を失ったとき、失恋でも、死による別れでも、それが痛切な痛みとして堪えるのは、愛の対象を失ったからだけではなく、その相手の前で輝いていた自分を失ったからなのでもある。私は2010年に、40年連れ添った妻を失った。彼女の前で自分がどんなに自然に無邪気に輝いていたかを、今ごろになって痛切に感じている。

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