「誰かに勝ちたい」ではなく「自分がこうありたい」 一度きりの人生だからこそ挑戦を続けた「藤村志保さん」の強さ

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弱音は言わない

 出演は途絶えることがなく、子供への朗読や子守唄を伝える活動も行っていた。2014年に背骨を圧迫骨折、一度は全快したが、現場から遠ざかる。

「私がテレビに出演すると番組が終わって間もなく電話を下さいました。よしこさん、見ましたよ、お話はきついけれども、その通りだと思う、などと率直な感想を伝えてくれたのです。体の痛みについては少し話すぐらいで弱音などおっしゃらなかった」(櫻井さん)

 その後も何度か骨折、療養が続いていた。

「桜をテーマにして舞がしたいと申しておりました。資料を集めていた時期もあります」(純一さん)

 6月12日、肺炎のため86歳で逝去。

 演技力や技術とは別の、人からにじみ出る品格を、芸品という言葉で語り、身に付けたいと自戒していた。精進を怠らない名優だった。

週刊新潮 2025年7月3日号掲載

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