上映3時間も映画「国宝」が“連日満席”の大ヒット…不祥事を乗り越えた「吉沢亮」をはじめ“キャスト全員がハマり役”で絶賛の声

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描かれる歌舞伎界の裏側

 華やかな表舞台を見ているだけでは分からない壮絶な内幕だが、名跡や大名跡の襲名をめぐるゴタゴタ、興行の裏側や配役などなど、歌舞伎ファンならあまり知りたくないであろう、ドロドロした裏側もしっかりと描かれている。

 そして、猛稽古を積んだ喜久雄は“花井東一郎”、俊介は“花井半弥”としてデビュー。舞台経験を重ね、お互いをライバルとして高め合い、芸にすべてを捧げ、次世代のスター候補として、ともに女形(おやま)の「東半コンビ」として売り出されることになる。

 そんな2人に影響を与え、その後の人生に大きく関わることになるのが、田中泯(80)が演じた当代一の女形であり、人間国宝の歌舞伎役者・小野川万菊。

「田中さんは1960年代からダンサーとして活躍しているだけに、舞台でのシーンは頭のてっぺんから足の指先までスキがありません。普段の話し方やしぐさも、いかにも女形の大御所という雰囲気を醸し出していました。あの役ができるのは泯さんしかいないでしょう」(演劇担当記者)

 吉沢と横浜は、歌舞伎の舞踊や所作も含めた稽古に1年半もの時間をかけ、クランクインしている。

「吉沢さんはともに人気映画シリーズとなった『キングダム』『東京リベンジャーズ』で激しいアクションをこなしています。横浜さんは中学時代には空手の世界王者になり、ボクシングのプロライセンスも取得するなど抜群の身体能力。それでも、歌舞伎の動きはとても繊細で、身につけるのは至難の業だったと思います。でも劇中での動きはすっかり歌舞伎俳優でした。『東半コンビ』として披露した舞踊『藤娘』を始め、『連獅子』、『関の扉』、『曽根崎心中』など、歌舞伎の代表的な演目をキャスト陣が披露していますが、まったく歌舞伎の知識がない人でも抵抗なく、約3時間の間、観客を飽きさせない構成になっています」(同前)

 順調にスター街道を歩む「東半コンビ」だったが、先に半弥、その後、東一郎が人生のどん底を味わうことになる。その際、歌舞伎界の男性たちに、本音をぶつけるのが「梨園の妻」を演じた寺島だった。

 寺島といえば、父は人間国宝の七代目尾上菊五郎(82)、母は俳優の富司純子(79)、弟は八代目尾上菊五郎(47)。自身の息子は尾上眞秀(12)、弟の息子は尾上菊之助(11)として舞台に立っている。

「主要キャストの中で歌舞伎俳優の血縁者は寺島さんのみです。なので、劇中の歌舞伎の家ならではのわずらわしい事はすでに体験済み。よそ者の東一郞に浴びせる強烈な言葉はセリフではなく『梨園の妻』たちの本音を代弁しているように聞こえました。この役も寺島さん以上にハマる役者はいなかったでしょう。寺島さん以外にも、見上愛さん(24)、高畑充希さん(33)、森七菜さん(23)がそれぞれ演じた女性たちは、東一郎と半弥いずれかの人生に大きく関わり、2人を献身的にバックアップします。なので、女性の観客の目線からでも共感できる部分は多いはずです」(芸能記者)

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