まだ作曲中なのに予約は100万枚…時代を築いた「AKB48」ヒット作に込めた井上ヨシマサの“叫び”

エンタメ 芸能

  • ブックマーク

最新アルバムが証明した「自分で歌える曲」

 井上のそんな言葉を象徴するように、2月に発売された最新アルバム「井上ヨシマサ48G曲セルフカヴァー」は、井上自身が歌い上げた5曲と、柏木由紀や松井珠理奈らが参加した5曲が混ざりあう一枚に仕上がった。あの「真夏のSounds good!」も、男性が歌い直すことで新たな世界観が見事に仕上がっている。

「コロナ禍のときに、“自粛、自粛”の空気がありましたよね。AKBも活動を停止していましたし。僕は裏方なんで曲を作り溜めておけばいいんですけど、世の中に流れているものに対して作っている感覚もあるので、そのときは休んでいいのかなと思っていたんです。でも一方で、ツイッターに毎日、ワンコーラスやサビだけ、生でギターを弾いて歌った動画をアップしていたんです。たまに柏木に電話して『歌わない?』って頼むこともしましたが、メンバーに頼むのも大変じゃないですか。自分で歌えば時間もかからずにアップできましたからね」

 2024年に発売した作家生活40周年を記念した第1弾アルバム「再会~Hello Again~」に続く企画を検討していたところ、プロデューサーの田村充義氏から「コロナ禍の頃にやっていたアレは?」と声をかけられた。そうして今回のアルバム「井上ヨシマサ48G曲セルフカヴァー」の方向性が決まった。

それでも曲作りには迷う

 多くのヒット曲を世に出し続けてきたが、それでもなお、曲作りに迷うことは大いにあるという。

「つい先日もそうですよ。秋元さんにLINEで『いい曲できたんで、送ろうと思ったんですけど、この間AKBのコンサートで聴いた曲に似てるような気がして。時系列から考えるとその曲が俺の曲に似ていたのに、素直に書いた曲を出せないってどういうことですかね笑』って送ったんです。そしたら秋元さんから『ヨシマサは令和の筒美京平なんだから、みんなにトレースされても仕方ないんじゃない?』って返事がきました。たしかに私も昔いろんな曲を書いていた頃に、ポニーキャニオンでは筒美京平ならぬ『小筒美京平(こづつみきょうへい)』なんて呼ばれてましたけどね(苦笑)」

 結局その曲は秋元に送ったものの、返事はなかった。「やはり似た曲があるのかも」と感じたという。「AIに作らせてもトレースされる可能性はある」と冗談めかして語り、期待を裏切りたい思いもあるが、それが評価されるとは限らない。それでも井上の曲を待つ人がたくさんいるのは確かで、今後も多くの人を楽しませるに違いない。

「みんなが曲を思い出すときって、メロディーを思い出すんです。メロディーは“叫び”から心に浮かび上がる。曲を作る人は、自分の叫びがあるならば歌うべきです。それが苦手なら、作曲家として他の人に歌ってもらえばいい。僕は仮歌を入れるとき、自分で書いた歌詞で“叫んで”います。心の中を放出するように。AKBの曲もそうして出来上がっていることを、今回のアルバムで感じてもらえたらいいですね」

 第1回【“YMOの前座”からAKB48のヒットメーカーへ 井上ヨシマサ、音楽人生の原点は小学生ジャズ】では、小学生時からジャズを始めた音楽形成の端緒などについて語っている。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。