始まりは1964年!? “雨中ヘッスラ”で球場を沸かせた男たち 引退試合で披露した「ロッテ」「広島」の選手も
日本列島は梅雨真っ盛り。プロ野球の試合も雨天中止になることが少なくないが、雨の中、球場まで足を運んでくれたファンへの感謝を込めたサービスパフォーマンスとして、すっかりおなじみになったのが、「雨中ヘッドスライディング」だ。【久保田龍雄/ライター】
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あんな無茶をするなんて
雨で試合中止になった直後、指名された選手がランニングホームランよろしくダイヤモンドを1周し、本塁で水しぶきを上げながらヘッドスライディングする人気パフォーマンスが、いつから始まったのかは、定かではない。
筆者が過去の新聞をチェックしたところ、NPBでは、1964年5月10日に札幌円山球場で行われた東京対西鉄で、東京・ソロムコ、西鉄・ロイの両助っ人が演じているのが、現時点で見つけた“最も古い記録”になる。
東京が1対0とリードの4回、降雨のため、ノーゲームになったが、当時北海道でプロ野球の公式戦が開催されるのは年に数度とあって、スタンドの1万人の観衆が「何とかしろ!」と騒ぎ出した。
そんなファンの要望に応える形で、両助っ人がベンチを飛び出し、ソロムコは一塁側、ロイは三塁側からダイヤモンドを走りはじめた。途中で合流すると、ロイがスライディングを披露。ユニホームを泥だらけにしながらの熱演に、スタンドはやんやの大喝采だった。
さらに10分後、二人は再びグラウンドに姿を現し、今度は二塁ベースで同時スライディングを鮮やかに決めた。
その後、「釧路から来た」という長髪の老人が外野席からグラウンドに降り、シャドープレーを演じて、笑いを取るなど、選手、ファン一体となったパフォーマンスで盛り上がった。
1980年7月15日のヤクルト対広島では、雨で試合開始が20分遅れると、広島の外野手・デュプリーが赤ヘルに赤い手袋といういでたちで、グラウンドに姿を現した。
スタンドのファンが「一体何事だろう」とあっけに取られて見つめるなか、シートで覆われた打席に立ったデュプリーは、1球目を見送る動作のあと、2球目をフルスイングして、ランニングホームランよろしくダイヤモンドを1周。三塁を回るときに念のため打球の行方を確認する迫真の演技を見せ、最後は水しぶきを上げて本塁にヘッドスライディングした。
試合後、発案者の古葉竹識監督はじめ5人から5000円ずつ計2万5000円を貰い、ご機嫌のデュプリーだったが、その日の「プロ野球ニュース」(フジテレビ系)で夫のパフォーマンスを見た夫人から「あんな無茶をするなんて」とたっぷり油を絞られたという。
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