「7月5日」予言で改めて注目集める「1999年7月」 『ノストラダムスの大予言』著者が口にしていた後悔の念

国内 社会

  • ブックマーク

多くの人が忘れている事実

「Mr.サンデー」に顕著だが、多くの人が忘れてしまっている事実がある。

『ノストラダムスの大予言』は1冊ではない、という点だ。第1作である『ノストラダムスの大予言 迫りくる1999年7の月、人類滅亡の日』の刊行は1973年。

 ほとんどの日本人はこの本で「ノストラダムス」なる占星術師の存在を知り、「恐怖の大王」なるフレーズを目にして、ある者は驚愕(きょうがく)し、ある者は絶望に暮れた。あっという間にミリオンセラーとなり、21世紀には明るい未来が待っていると思っていた人々に冷や水をぶっかけて、「そもそも21世紀なんて来ないのだ」という気持ちすら抱かせたのである。

 ヒット作に続編はつきもので、それから6年後『ノストラダムスの大予言2 - 1999年の破局を不可避にする大十字』が刊行される。それだけでは済まない。以後、次々とシリーズが刊行されていく。

『ノストラダムスの大予言 3 - 1999年の破滅を決定する「最後の秘詩」』

『ノストラダムスの大予言 4 - 1999年、日本に課された"第四の選択"』

『ノストラダムスの大予言 5 - ついに解けた1999年、人類滅亡の謎』

 これまで謎は解けていなかったのか?という疑問も何のその、シリーズは続く。

『ノストラダムスの大予言 スペシャル日本編 - 人類の滅亡を救うのは「日の国」だ』の刊行は1987年。まるで絶好調の日本経済を反映したかのようなタイトルである。

 続いて1990年には、

『ノストラダムスの大予言 中東編 - 中東(フセイン)危機は人類破局への序曲だ』

 と、湾岸戦争を取り入れた路線に。続いて気候変動にも着目したのが、

『ノストラダムスの大予言 地獄編 1999年未知の超エルニーニョが地球を襲う』

 そしていよいよ1999年を翌年に控えた98年、刊行されたシリーズ最終巻が10冊目となる、

『ノストラダムスの大予言 最終解答編 - 1999年、“恐怖の大王”の正体と最後の活路』

 である。

 この段階ですでにシリアスに受け止めるべきではないテイストを当人たちもそこはかとなく醸し出していると受け止めるべきだろう。

五島氏が張っていた予防線

 実際、五島氏はシリーズとは別に96年に刊行した著書『1999年日本「大予言」からの脱出: 終末を覆す「来るべきものたちの影」』では、すでに滅亡説を撤回している。99年7の月に恐怖の大王が来るうんぬんは、あくまでも現代人への警鐘だったという立場である。99年7月を目前に、五島氏は取材に答え、次のように述べている。

「わたしが本を書いてからの四半世紀で核戦争や環境破壊などの危険に人々が目覚め、当面の危機は避けられそうだということなのです。つまり人間もそれほど愚かではなかったわけだ。

 こうして予言に書かれてあることも頑張れば回避できるんだという気持ちを、特にいまの若い人に持ってもらえればと思う。わたしは、もうノストラダムスの本を書くつもりはありません……」(「FOCUS」1999年7月14日号)

 悪い予言が外れた際に「気を付けたおかげだ。良かったじゃないか」というのは占い師や教祖の使いがちなロジック。五島氏もそれに似た予防線を張っていたわけである。

 こうした変化は当時の人も当然よく知っていた。それだけに、本気で終末を恐れていた人は、令和の人が想像するよりは少なかったのである。

次ページ:「予言は外れた」という見方を否定

前へ 1 2 3 次へ

[2/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。