異なるメーカーの製品は同じトラックで運べない…「下請け企業」が頭を抱える大手メーカーの“ナゾすぎる商慣習”

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メーカーと同じ車種で入庫させる

 輸送時の理不尽はそれだけではない。

 製造現場には、メーカーCの工場にクルマで入場する際は、そのメーカーCの車種のクルマでなければならないという暗黙のルールがあった。なかには、構内に入る際に記入する「入門票」の記入欄に、入構する車両のメーカーを書かされる工場も存在した。

 さらには、小学生などが社会科見学に来る際に乗るバスでさえも、そのメーカーや系列の車両でなければならない、とする「配慮」が求められるケースも。

 現役のドライバーに聞いてみたところ、これらは現在の現場にも未だに続いているところが少なくないという。

 こうした中小企業が大手の顔色を窺う「古い商慣習」が蔓延ったなかで、「独自の技術」を他企業に売り込むことは困難だ。

「自分の下請けは、何かあっても守りはしないが、他の企業と関わってもほしくない。関わるなら、関わっていることを見せてほしくない」というのが日本の裾野産業なのである。

成長できないのには中小企業にも問題

 一方、日本の中小企業自身が抱える課題も多い。その1つは、以前にも紹介した「承継問題」だ。

 日本の中小企業の多くは家族経営。こと町工場に関しては、その割合が高くなる。しかし、こうした町工場は、少子高齢化はもちろんのこと、「自分と同じような苦労はさせたくない」と、経営者である親が子に教育を受けさせることで、子が工場を継がず、大学進学後、大企業に就職するようになる傾向もある。

 たとえ子が継いだとしても、高齢の親が「会長」などとして発言権を持ち続けることで新しい風が入りにくくなったり、トラブルが生じたりしてうまくいかないことも少なくない。

 そしてもう1つ顕著なのが、「働き方改革への対応の遅れ」だ。

 経営者からよく聞かれるのは、「時代の流れによって労働者の権利が守られるようになり、労働時間や環境を見直す法ができたため、以前のように長時間社員を働かせられなくなった」という声だ。

 安い工賃でも、仕事をまとめて請けることで食いつないできた町工場は、労働者の労働時間が制限されたことで工数が稼げず、今までのように多く仕事を請けることができなくなったのだ。

 こうした声は、歩合制で働く現場の労働者からも一部聞かれており、「もっと働かせてほしい」という声も少なくない。

 しかし、本来は「短い時間でも効率よくしっかり稼げる現場」を目指すべきで、「稼ぎたいから働かざるを得ない」という考えからは脱却しなければならない。だが、体力のない中小零細の工場は、資金力・人材力の観点からその効率化が難しく、結果的に法やルールを犯してしまうケースが起きてしまうのだ。

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