「大学生ドラフト候補」150キロ超を連発する剛腕も…なぜか高校時代はエースじゃない投手が多い…スカウトが明かす、その理由は?
選手の将来に目を向ける指導者が増えている
一方、NPB球団のスカウトは、以下のような見解を示している。
「球数制限が導入されたことで、最近では高校野球でも複数の力のある投手を抱えていることが多く、“絶対的なエース”は少なくなっているように思います。甲子園常連校は、140キロ以上の投手が何人もいることも珍しくありません。背番号は二桁だけど、力はエースと変わらない投手が増えていると感じています」
さらに、こう続ける。
「それと大きいのは、指導者の意識の変化ではないでしょうか。高校ではまだ体ができていないような投手には無理をさせず、卒業後に花開けば良いという考え方をする指導者が増加しています。どの強豪校もトレーナーが選手のトレーニングを教えています。彼らは選手の将来を考えて、無理なことはしないので。そういう役割の人が増えていることも大きいですよね。あともう一つ言えるのは、プロに行くような選手と一緒に練習していると、どれくらいまでレベルアップすれば良いか基準が分かる。これは同級生に限らず、先輩を見てというのもありますね。高校でも大学でも毎年のようにプロに選手を輩出しているようなチームは、このようなサイクルが上手く回っているのではないでしょうか」
筆者が、高校野球の現場を取材していても、指導者から選手に対して「今はまだまだ力がありませんが、大学で伸びると思います」といったコメントをよく耳にする。
“目先の勝利”だけでなく、選手の将来に目を向ける指導者が増えていることは望ましいことだ。ここまでは大学生投手を中心に話を進めてきたが、最後に大卒投手が独立リーグに進んで、大きく伸びるケースにも触れたい。
前出のスカウトは、独立リーグが大卒投手の成長に大きな役割を果たしているという。
「社会人野球の企業チームだと、(全国大会の)都市対抗出場が至上命題となっており、投手の完成度が求められる。大学では粗削りだった投手は、社会人野球に進むと、苦しむことが多いですね……。逆に、独立リーグは選手をNPBに送り出すことが重要ですし、試合数が社会人野球に比べて多いので、発展途上にある投手でもチャンスがある。このような投手は、投球が上手くまとまり、大きく成長することがあります。どちらが良いとは一概には言えませんが、NPBを目指すのであれば、独立リーグが合っている選手もいますね」
今年の独立リーグでは、東海大相模時代は控え投手で、国際武道大やバイタルネットで目立った成績を残していなかった冨重英二郎(BCリーグ神奈川)が大きく成長し、今秋のドラフトで有力候補に浮上している。
近年、独立リーグからのNPB入りは増加しており、選手にとってNPBを目指すための選択肢が増えたことは喜ばしい。選手によって伸びる時期と、特性に合った環境が異なるのは当然のこと。今後もより多くの選手が、才能をあますことなく花開くような野球界になることを望みたい。
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