「君には何もない。インスピレーションが湧かない」 日本映画界の巨匠が名優・藤竜也に言い放った「人生の中で一番大事な言葉」

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緻密で無欲な自分探し

 しかし、73歳で「世界の北野」が監督する「龍三と7人の子分たち」、80歳を過ぎて「高野豆腐店の春」でも主演し、「高野豆腐店の春」は先の大高が主宰する日本映画プロフェッショナル大賞の24年の特別功労賞を受賞した。24年の「大いなる不在」にも出演し、主演の森山未來以上に高く評価されている。

「北野監督の映画などを経て、80代に入ってからの藤さんは俳優としてのギアを上げた。日活時代の荒ぶる姿もそこに重なり、スクリーンの藤さんには心を揺さぶられる」と大高。

 9年前、「藤竜也 老い 仕事を語る」という連載にもご登場いただいた。最後はこう締め括った。

「仕事を面白がってやれるエネルギーだけはなくしたくない。一歩一歩がサイコロみたいなもので、四角いサイコロをよっこらしょとやって、目が出たらそれを終わりまでやって、また、サイコロを振る…。役者はその積み重ねです」

 緻密で無欲な自分探しが今も続いている。

峯田淳/コラムニスト

デイリー新潮編集部

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