「打率0割台」「サイン見落とし」で2軍落ちも……巨人のレジェンド4番が「リチャードこそ天性のホームランバッター」と太鼓判を押す理由
第1回【岡本和真の代役「リチャード」に“2軍落ち”の非情通告…巨人OBが明かす「阿部監督」が電撃トレードに踏み切った“本当の狙い”】からの続き──。巨人が内野手の秋広優人(22)と投手の大江竜聖(26)を“放出”し、ソフトバンクから内野手の砂川リチャード(26)を獲得したトレードに巨人ファンは強い不満を持っているようだ。(全2回の第2回)
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【写真】秋広選手と中田翔内野手との丸刈りツーショット。秋広選手が阿部監督にタメ口をきいた決定的瞬間も
理由はソフトバンクの秋広は交流戦で活躍し、巨人のリチャードは2軍落ちという、文字通り“明暗”の分かれた状況になっているからだ。XなどのSNSには阿部慎之助監督(46)の責任を追求する声も目立つ。
だが巨人OBで野球評論家の広澤克実氏は「阿部監督が秋広選手を“放出”しようと考えた理由の半分は理解できます」と言う。
「阿部監督は試合中に目配りや気配りができる選手が好きなのでしょう。一つ一つのプレーを考え抜き、自覚的に行う。雑なプレーや凡ミスが少ないというタイプです。打席に立つ時は配球を読むためバッテリーの心理状態まで想いを巡らせる。浅い考えでバットを振り回すのは御法度です。私もヤクルト時代、野村克也監督から試合中の目配りや気配りの重要性を徹底的に教えられました。確かに秋広選手は目配りや気配りが充分ではないところがあり、阿部監督の気持ちも分かります。とは言え、やはり秋広選手が可哀想だとも思えるのです」
なぜ広澤氏は秋広を「可哀想」と言うのか。それは「目配りや気配りが大事だと、どれだけ徹底的に首脳陣が指導したか」という問題が残るからだ。
野村監督の細かい注意
「“凡事徹底”という言葉があります。野球場の設計とは本当によくできていて、守備中の選手はどこにいてもアウトカウントの表示が見えます。それだけでなくアウトを1つ取るとキャッチャーが大声で確認します。ところが、それでも年に数回はアウトカウントを間違える選手がいます(笑)。ヒットエンドランのサインも見落とす選手はいます。一方、プライベートは非常に自己中心的でも、プレー中の目配りと気配りは抜群という選手もいます。選手の『凡ミスはしてはならない』という自覚も大事ですが、やはり問われるべきは監督やコーチの指導方針なのです」
広澤氏が薫陶を受けた野村克也氏は1990年から1998年までヤクルトの監督を務め、リーグ優勝4回、日本シリーズを3回制した。
名将と絶賛された野村氏が掲げたのが「ID野球」だ。データに裏打ちされた頭脳的なプレーを重視し、経験や勘の要素は完全に排除した。
「凡ミスを減らせ。頭で考えてプレーしろ。野村監督から何度同じことを注意されたか分かりません。『耳にタコができている』と心の中で悲鳴を上げても、翌日も同じ注意です。しかし、これこそが凡事徹底を実践する唯一の方法なのです。果たして巨人の首脳陣は、野村さんが監督だった時のヤクルトほど、選手に細かいことを注意し続けているでしょうか。秋広選手の耳にタコができるほど、細かい説教を繰り返していたのでしょうか」(同・広澤氏)
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