“3カ月で歯が抜けた”“4000万円騙し取られた”まだある「インプラント詐欺」歯科の被害告発

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「あなたたち、年金で暮らせるでしょ」

 しかし、期日になっても約束の金が戻ってくることはなく、高橋氏に金のことを尋ねると目に見えて不機嫌になったという。

「インプラントの手術中、患者は全身麻酔をかけられます。もし私の発言が高橋の逆鱗に触れて嫌われてしまったら、眠らされている間に何をされるか分からない。その恐怖から、気付けば彼の機嫌を損ねないよう、ビクビクするようになっていました」(被害女性)

 この女性の場合、いくら待ってもインプラントが埋め込まれることはなかった。「(手術に必要だという)左巻きのドライバーが届いてなくて」「スイス製のインプラントが輸入できなくなって」などと弁明を繰り返し、23年に入ると連絡すら取れなくなってしまったのだ。

 さらに、被害は治療費にまつわるケースにとどまらない。高橋氏は「歯科器材購入費」などと称し、狙いを付けた患者から金を借りては踏み倒している。ある高齢女性は老後の備えとしていた貯金4000万円以上をだまし取られ、返済を迫ると「あなたたち、年金で暮らせるでしょ」と突っ張ねられたという。

「詐欺を働いたんですか?」と聞くと「そうなります」

 こうした被害の拡大を受け昨年7月、TDOの出資者を名乗る人物や有志が中心となり、30名ほどの被害者を集めて説明会が開催された。そこで高橋氏は被害者らに、自身が金銭トラブルを抱えており、治療を継続するだけの金銭的な余力がないことを一方的に通達したのだ。

 この会である被害女性から「あなたは詐欺を働いたんですか?」と問われると、「そうなります」と認めた。TDOは今年1月から閉院状態になっており、すでに複数の被害者が千葉中央署に被害届を出している。ある被害者に対して担当刑事は、

「うちの署としては、一番大きな事件として扱っている。捜査2課が詐欺での立件に向けて動いている」

 と明かしたという。元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士に聞くと、

「現在の資産状況では先々患者さんの治療ができなくなることが分かっていながら相手をだまし、お金を出させていたのなら、詐欺罪に当たる可能性が考えられます」

〈約19億円の負債を有して支払不能〉

 7月8日、多数の被害者に「破産管財人就任のご連絡」と題された通知が届いた。それによると、

〈上記破産者(注・高橋氏のこと)は、約366名の債権者に対して合計約19億円の負債を有して支払不能である〉

 として、6月26日に千葉地裁で破産手続開始決定が発令されたという。債権者の内訳ははっきりしないが、その大半はTDOの患者だと考えられる。自己破産によって、高橋氏は自らの患者たちから逃げ切りを図るつもりなのか。

 7月15日、事実関係を確認すべく、高橋氏が現在働いている某歯科クリニック(都内)から出てきたところを直撃した。

 だが、こちらが名乗った途端、見向きもせずに彼は足早に歩き出した。5分ほど問いかけながら並んで歩くも終始無言。商業施設のトイレに逃げ込んだきり、籠城を決め込んでしまった。

 後日、改めて、破産管財人に問い合わせるも、

「就任したばかりのため、状況を把握しきれておらず回答は差し控えます」

〈快適な未来〉を夢見た被害者たちから、金も歯も奪い取った罪はあまりに重い。

前編「ついに逮捕の『詐欺インプラント歯科』院長 『健康な歯まで抜かれて…』被害者が明かす悪質すぎるその手口」では、700万円という大金を支払ったにもかかわらず、健康な歯を抜かれた上、治療を途中で中断された被害男性の悲痛な告発を紹介している。

デイリー新潮編集部

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