大谷「マウンド復帰」で見えてきたド軍の苦しい台所事情…のべ15人の投手が離脱で頼りは「日本マネー」

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完全な予想外

 6月16日(現地時間。以下同)、ドジャース・大谷翔平(30)が23年8月23日以来、663日ぶりに公式戦のマウンドに帰ってきた。

 一般的な投手の復帰はマイナーリーグでの登板を経て実戦感覚を取り戻してからになるが、打者・大谷を公式戦で欠場させるわけにはいかない。マイナーでの調整登板と公式戦の掛け持ちもできないので、投手復帰が“ぶっつけ本番”になる可能性は以前から指摘されていた。しかし、その登板日まで“サプライズ”になるとは、ファンもメディアも完全な予想外だった。

「15日のジャイアンツ戦後、デーブ・ロバーツ監督(53)から切り出したんです。同日、大谷は3打数3安打1四球で全打席に出塁。そのことを質問したら、『(投手としての)復帰も近いしね』と返し、『おそらく』と前置きしたうえでパドレス戦の初戦を示唆しました。そのパドレス戦の初戦となる16日、向こうはエース級のディラン・シース(29)が先発してくるのに対し、ドジャースは先発投手不在のブルペンデーとなるのは避けられない状況でした」(現地メディア関係者)

 15日のゲームが終了した時点で、首位ドジャースと3位パドレスのゲーム差は「3」。投手の故障者続出で「パドレス優勢、逆転首位」の可能性も予想されていたが、投手・大谷の復帰でファンの関心も変わってきた。ロバーツ監督は「多分、最初は1イニングからになる」と、2、3度繰り返してから、

「彼は投手デビューの準備はできている。ショウヘイの登板にワタシもワクワクしている」

 と“ファン目線のコメント”で会見を締め括った。

「一番先発投手兼DHで大谷がアナウンスされたとき、ドジャースタジアムは大変な盛り上がりを見せていました」(前出・同)

 大谷は1回28球を投げ、被安打2、失点1。本来の投球とは程遠かったが、無事に投げ終えたことに安堵しているようだった。

“日本マネー”に支えられるドジャース

 この突然の二刀流復帰に、さまざまなチーム事情も見えてきた。のべ15人もの投手がIL(負傷者リスト)入りし、投手陣のやり繰りが厳しくなってきた。「その穴埋め」的な意味合いもおそらくはあったのだろう。興味深いのはその復帰舞台が本拠地・ドジャースタジアムになったことだ。

 MLB公式サイトなどが発表した16日のパドレス戦の観客動員数は5万3207人。今季のドジャースは年間観客動員数が400万人を越える可能性も見えてきている。そして、その集客力をアップさせているのは「日本マネー」なのだ。

 去る5月30日、ドジャースは日本の化粧品メーカー、コーセーとのパートナーシップ契約を延長したことを発表している。同社とは26年まで契約を結んでいたが、27年以降の3年分を延長させた。スタジアム内にはさまざまな公式ストアがあり、日本の球場とは少し違った光景も醸し出している。飲食ブースや野球関連グッズショップが主体なのは同じだが、ショッピングモールのようなイメージで、化粧品メーカーの同社が公式ショップ内で商品を販売している。

「ドジャースタジアムで大谷がホームランを打つと、コーセーのCMがバックスクリーン近くのスコアボードで流されるんです。球場内のLEDスクリーンでは、同社の商品ロゴが掲載されています」(前出・同)

 ドジャースとパートナーシップを組む日本企業はほかにもある。焼酎の二階堂、日本酒の八海山、ヤクルトなどが名を連ねており、ドジャースタジアムでは定期的に「日本デー」が設けられている。そんな“日本商品”もアメリカのファンにもウケているのか、ドジャースの1試合当たりの観客動員数は平均5万1364人(5月末時点)で、昨季の4万5947人を大きく上回っている。

「ドジャースタジアムの収容人数は5万6000人とされています。ブルペンデーになるはずだった16日が、大谷の投手復帰でほぼ満員の5万3207人を集めました。このパドレスとの4連戦は首位攻防戦とはいえ、メジャーリーグ全体での話題性は大きくありませんでした。それがロバーツ監督の発言で一変したのです」(米国人ライター)

「ドジャースを支えているのは日本であること」を証明するもう一つのデータがある。前カードのジャイアンツ戦だ。

 13日のジャイアンツ戦に先発したのは山本由伸(26)、14日はクレイトン・カーショウ(37)。カーショウは近年こそ怪我に苦しんだが、通算212勝(16日時点)を上げ、「生涯ドジャース」を宣言した看板選手である。そのシンボル的投手が先発した14日の観客動員数は5万1548人で、山本が先発した13日は5万3022人。予告先発には登板する投手を明かすことでの集客数アップの狙いもあるとされており、その意味で言えば、山本のほうがファンの関心が高いことになる。

「日本からの観光客が急激に増えたということではなく、地元のファンがスタジアムに足を運んでいる。ロサンゼルスのリトル・トーキョーにはビル一面に飾られた大谷の壁画があり、彼の活躍が日系人の誇りとなり、ふだん野球中継をあまり観ない人たちの間でも、共通の話題とされています」(前出・現地メディア関係者)

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