エスカレーターの「右側空け」は親切ではなく“自己保身”…なぜ日本人はわずかな「急ぐ人」のために道を譲るのか
いたたまれない感覚
これはあくまでも「親切」であるが、日本のエスカレーター片側空けはあくまでも「舌打ちされたくない」「非常識な人だと思われたくない」という、親切心とは真逆の「自己保身」である。実際、あなたが右側にいたとして、その時同じタイミングでエスカレーターに乗っている人達は、あなたの人生になんの関わりもない赤の他人である。なので、悠然と立ち続けてもいいのだが、日本人はこの1~2分程度のいたたまれない感覚を極度に嫌がるのだ。
だが、「右側に立つあなたが正しい」と言いたい。エスカレーター自体は、2人が立つことを前提に設計されており、左側だけに人が殺到し、右側を歩く人を優遇することにはなっていない。実際、左側だけに負荷がかかるとエスカレーター自体の劣化も早まることだろう。
この「左側だけに人が殺到して行列ができて非効率になる」ことを表すゲームがある。ナムコが1981年に発売した「ギャラガ」というシューティングゲームである。このゲームは宇宙からやってきた悪者を打ち落とすゲームなのだが、開始時点では、FIGHTERという機体が悪者に対峙する。
非常識に付き合うのはあまりにも非効率
敵側にはボス的なキャラがいるのだが、これがFIGHTERに対し超音波的なものを発して捕獲する。捕獲された場合、プレイヤーはその捕獲されたFIGHTERを救出するのだが、無事救出できた場合は、2機で悪者に対峙することができるのだ。
こうなると非常に快適にゲームをプレイできるようになる。それまで1機でチマチマと敵を倒していたのだが、2機が横並びに合体すると各段に相手を倒す効率が高まる。これはまさにエスカレーターの「片側空け」に通じるものなのだ。とにかく人をさばく面で、エスカレーターの片側空けは効率が悪過ぎる。
「舌打ちされるのがイヤだ」「急いでいる人のためになりたい」といった理由で人々は左側に行列を作るわけだが、そろそろ「右側を歩く非常識人に優しくしないでいいんじゃない」という風潮を作るべきではないだろうか。エスカレーターの片側空けはあまりにも非効率である。急ぎたい人は階段を走れ。