今季はこれまで4件が成立! プロ野球トレードの“裏側”から探る次に動く「球団名」とは
セ・パ交流戦に突入した今年のプロ野球。両リーグともまだまだ混戦状態続いているが、優勝争い、Aクラス争いのために補強に動いている球団は少なくない。大きな話題となったのが、ソフトバンクと巨人の間で行われたリチャードと秋広優人、大江竜聖の交換トレードだが、他にも山野辺翔(西武→ヤクルト)、岩嵜翔(中日→オリックス)、佐藤龍世(西武→中日)の3人も金銭トレードによって移籍となった。7月31日のトレード期間終了までにまだ動きがある可能性も高いだろう。【西尾典文/野球ライター】
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メジャーと比べトレードが少ないNPB
そもそも、このようなトレードはどのような経緯で成立するのだろうか。ある球団の編成担当者に聞くと、以下のように話してくれた。
「プロの球団にはアマチュアの選手を調査するスカウトとは別に、他球団の選手を調査する編成担当が必ずいます。球団によっては『プロスカウト』とも言ったりしますね。視察するのは、基本的に二軍の試合です。メジャーであればバリバリのレギュラークラスがシーズン中にトレードとなることもありますが、NPBではそういうことはまずありません。対象は現在、一軍で出番が少ない選手ということが大半です。そういう選手のプレーぶりを日々ウォッチして、レポートにまとめる」
ただ、実際にトレードがまとまる件数はそれほど多くない。
「こちらが良いと思う選手は当然、所属している球団も評価していることが多いですから、簡単に話が進むケースは少ないです。メジャーは球団数も多く、低迷しているチームは、そのシーズンを早々に諦めて主力を放出して将来に舵を切るということもありますが、NPBはそういうことはありません。それもトレードが少ない理由だと思います」(編成担当者)
今年のペナントレースを見てもセ・リーグではヤクルト、パ・リーグではロッテが厳しい状況だが、それ以外の5チームはまだまだAクラス入りの可能性は十分に残されている。それを考えると、トレード期間終了までに来季に舵を切る球団がなかなか出てこないというのは、理解できるところだ。
球団同士の繋がりには強弱がある
前出の編成担当者は、こう続ける。
「他球団の編成担当とは、当然いろいろと情報交換をします。ただ球団によって多少違う部分はあるかもしれませんが、担当者が主導になって働きかけてトレードが成立するというケースは、あまりありません。GMや編成部長など編成のトップとなる人同士が話し合って決まることが多いですね。現場、つまり監督の意向が強い球団がありますが、逆にそうではない球団もあります。編成担当者にも事前に候補となっている選手について相談もなく、編成トップ同士で話が決まって、後から知らされるということも珍しくありません」
そうなってくると、やはり大きいのは編成トップの人脈や交渉力だ。
「いろんな球団を経験している人や、アマチュア時代に名門と呼ばれる大学出身で、母校の繋がりが多い人が重宝されやすいのは、そういう理由からだと思います。また人間同士でやっていることですから、球団同士の繋がりも強いところと弱いところはありますね」(編成担当者)
アマチュア選手を獲得するドラフト会議も担当スカウトの名前が取り上げられることが多いが、実際に最終的な決断をするのはスカウト部長や編成トップと言われている。球団によっては監督の意向が強く働くケースもあるという。そういう意味では、アマチュア選手の獲得もトレードも構造は同じで、編成トップや現場のトップ次第と言えるだろう。
冒頭で触れたリチャードの獲得は、巨人の阿部慎之助監督の強い意向が働いたと言われている。一方、ソフトバンクが秋広だけでなく、大江も獲得できたことは交渉の結果と見られる。
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