「イジられ」の名手 ダイアン・津田はなぜ、輝き続けるのか 49歳で大ブレークを分析

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情けない感じに笑い

 このとき、津田は何をやるのかを事前に全く相談されておらず、ランジャタイの国崎和也が考えた「ゴイゴイスーミュージカル」というネタを観客の前で見せることになった。津田は不安そうな表情を見せながらも、全力でパフォーマンスをした。すると、いかにもランジャタイらしい不思議な世界観のそのネタは爆笑をさらった。視聴者にも強烈なインパクトを残した。何かに巻き込まれているときの津田は向かうところ敵なしなのだ。

 本人が望んだことではないかもしれないが、津田は「イジられ」の名手である。漫才ではツッコミを担当しているが、キャラクターとしてはほかの芸人にイジられるのが似合っている。目つきや態度の悪さ、落ち着かなさ、怒りの沸点の低さなど、すべての要素が「イジられ」に適している。

 津田がバラエティ番組の中でむきになって怒ることがあっても、決して気まずい感じにはならず、むしろその情けない感じが笑いを誘ったりする。津田のそういう部分は芸人やお笑いファンの間では以前から知られていたのだが、ここ数年でその認知が急速に一般層にまで広がった。

 その理由の1つは、彼自身が年齢を重ねて、若い頃のトゲが取れて、年相応の哀愁を身につけたからだろう。全国区のテレビに出るようになってから日が浅いので、若手の芸人だと思っている人もいるかもしれないが、津田は現在49歳。もうすぐ50代に達するこの年齢になって、もともとあった情けないキャラが見た目のイメージと合ってきた。それが昨今の大ブレークにつながっているのではないか。

 打てば響く反応の良さがあり、悪い態度を見せてもどこか憎めない愛嬌がある。出生率は低下し、若者の数が激減している日本において、津田は「おじさん世代の星」としてこれからも輝き続けるだろう。

ラリー遠田
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)など著書多数。

デイリー新潮編集部

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