自ら「ADHD」をカミングアウト 60歳監督が明かす20代「ホチキス止めも満足にできなかった」

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君塚匠監督インタビュー

 永瀬正敏主演の「喪の仕事」や黒木瞳主演の「月」などで知られる君塚匠監督(60)。自身のADHD(注意欠如・多動症)を主題に据えた新作映画「星より静かに」が、6月21日より全国順次公開される。監督・脚本・企画・主演のすべてを務めた本作では、自らが55歳でADHDと診断された経験を出発点に、当事者としての実感をフィクションとドキュメンタリーの両面から描き出した。君塚監督がADHDを告白し、映画にした理由とは?

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 ADHDは、発達障害の一種であり、不注意・多動性・衝動性といった特性を持つ。集中が続かずミスが多い、落ち着きがなくじっとしていられないといった行動が日常生活に影響を及ぼす。日本国内には約300万人の当事者がいるとされ、実際には診断を受けていない人も多い。

 君塚監督は子どもの頃には砂に体がつくのを極端に嫌がるなどの行動があり、20代でテレビ局に勤務していた際にはホチキス止めも満足にできなかったという。「思い返せば、兆候はあったんです」と語るように、長年“うまく社会に適応できない”という感覚と向き合ってきた。

 双極性障害も患っていたが、40代の頃に糖尿病が悪化し、腎臓・目・足にまで症状が広がった。

「医者からは『透析間近です』と宣告されました。それをウォーキングしたりして、治したんです。40代の頃は本当に悲惨でした」

 その後は生活改善を進め、精神的にも肉体的にも安定してきた。医師から正式にADHDと診断を受けたのは約6年前、55歳の時だ。

「専門学校で授業はできるんですけど、事務的なことが一切できなくて、『あの人、大丈夫なの』という噂が出てきた。理事長に事情を言わないわけにはいかないなと思い、その流れで病院を受診したんです」

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