八神純子、「どこでブレスをするのかわからない」自作曲を歌い上げた80年代アイドルに驚き! “まさかの国”進出への想いも語る
シンガーソングライターの八神純子と、昭和そして令和におけるヒット曲を振り返るインタビューを全3回にわけて展開してきたが、今回がその最終回となる。第1回では、令和においてヒットしている1983年リリースの「黄昏のBAY CITY」、第2回は『ザ・ベストテン』(TBS系)時代のヒット曲などについて語ってもらったが、今回は近年の活動に触れてみたい。
ハードすぎる提供曲を歌う河合奈保子に「やっぱり歌がうまいな、と思いました」
その前に、八神が’84年、当時アイドルとして活躍していた河合奈保子にシングル「コントロール」とアルバム『Summer Delicacy』のA面全5曲の楽曲を提供した経緯を尋ねた。
「河合奈保子さんが私のファンだということで、先方から楽曲の依頼があったんです。私は曲を書くときに、この人がどれくらい歌えるかなどはあんまり考えていないのですが、できあがったのを聴いて、彼女、歌がうまいなと思いました。彼女にピッタリでしたから、セルフカバーはしませんでした。自分で作ったものは、思い入れがあるので今でもバッチリ覚えています」
八神はそう言って、「コントロール」のサビの部分をそらで歌ってみせた。本作は、サビの部分で高音を張り上げる部分が長く続くので、並みのアイドルでは到底歌えない作品だ。難易度の高さで言えば、そのアルバムに収録された「太陽の下のストレンジャー」は、超高速で、なおかつ高音が続くため、「さらにハイレベルでは」と尋ねると、
「そうです。『太陽の下のストレンジャー』は、インストゥルメンタルの速弾きみたいなメロディーになってしまって、私がガイドボーカルを入れる時、自分で作っておきながら、“この歌、いったいどこでブレスをするんだろう……”と心配しながらデモテープを渡しました。だから、それを歌えているってことは、彼女はやっぱりうまいんですよ。でも、アイドル出身だと、歌の上手さは求められないし、なかなか認められない。そのなかでよく頑張っていたんだなと思いますね」
ちなみに、河合奈保子の現在のSpotify再生回数ランキングにおいて、シングル表題曲以外の最上位は、その「コントロール」のB面だった「夏の日の恋」であった。本作は、八神のシングル「Mr.ブルー~私の地球~」のB面にも収録されたメジャー調のポップな楽曲だ。サビの高音が伸びる部分はまさに、夏の晴れ渡った青空を想起させる。
「この曲は、あっという間に書けて、レコーディングもすぐできてしまいました。作詞を担当してくれた三浦徳子さんからは、“♪渚はイヤリング はずしてくたそがれ~♪ って、すごくいいフレーズが書けたのよ!”と言われて…きっとA面にしてほしかったのでしょうね」
そんな隠れた楽曲の、はつらつと歌う河合奈保子版が令和の今、改めて評価されているというのは興味深い。また、八神自身の楽曲に関しても、アルバムが最も売れたのは’78年から’82年なのに、現代において世界的に聴かれているのは、’83年から‘85年に発売されたアルバム曲に集中しているのも面白い。当時から、未来を見据えて曲を作っていたということだろうか。
「面白いですよね~! でも、’85年に『COMMUNICATION』を作ってから随分経って、アメリカでそっくりな曲が出てきたんです。おそらく、私の曲を知らずに書いたんだと思うのですが、私と同じフレーズが出てきたり、私のアレンジと似ていたり、“同じことを考える人がいたんだ!”と驚きました。当時の私は、それだけ海外を意識して書いていたんでしょうね。だから2曲だけじゃなく、全曲英語で書いていたら、ひょっとしてもっと早くに海外でヒットしたのかもしれません。未配信ですが、’90年代のアルバム『Mellow Café』や『So Amazing』は、今聴いてもカッコイイと思います」
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