八神純子のヒット作「みずいろの雨」は「岩崎宏美さんの歌声を想像して作った」、中島みゆきを“ライバル視”していた過去も明かす
当時は批判の声もあったアルバム『COMMUNICATION』が令和では最大の人気に
そして、Spotify第4位、第9位、第10位、第11位と、’85年のアルバム『COMMUNICATION』の収録曲がこぞって上位にランクイン。
当時、最もラジオやテレビでかかっていたのはドラマ『許せない結婚』(TBS系)の主題歌となった「チーター(CHEATER)」だったが、同アルバムからは、それ以上に「1984(西暦2000年に向けて)」「IMAGINATION」「COMMUNICATION」「カシミアのほほえみ」「ジョハナスバーグ」と人気曲が大量にあるのが驚きだ。
「’83年に全篇英語のアルバムを発売したのですが、感情の入らない英語になってしまい、とても歯がゆい思いをしました。向こうでインタビューを受けた時も、自分ひとりでは気持ちを伝えきれず、通訳の方がつくことになったのが、めちゃくちゃ悔しかったんです。だから、英語は喋れるようにしようと心に決めました。
それで、『COMMUNICATION』では、スケールの大きな音楽を作りたいと思っていて。英語詞のタイトル曲や、人種問題をテーマにした「ジョハナスバーグ」を入れるなど、やりたかったことを全部出せました。でも、当時移籍したアルファ・ムーン(現在はワーナーミュージック・ジャパンのレーベル)では、(同レーベルで大ヒットしていた)山下達郎さんや竹内まりやさんと比べられて、辛かったですね(苦笑)」
ちなみに、『COMMUNICATION』は当時もオリコン9位にランクインしており、決してヒットしなかったわけではない。なお、Spotify再生回数で同アルバム作品のなかで最上位の「1984(西暦2000年に向けて)」は、『新世紀エヴァンゲリオン』の楽曲で世界的に注目される鷺巣詩郎がアレンジを手がけている。
「このアルバムは、当時ファンの方からも“違和感がある”など多くのご批判があったのですが、誰にも束縛されず作ったため、時代が追いついていなかったのかもしれません。でも、それが40年経って私の中で一番聴かれているアルバムだなんて、とっても嬉しいですね。なんだか不思議な感じがします」
『ザ・ベストテン』で久米宏にイジられ続けた思い出、本人に“真相”を聞くと…
Spotify第5位と第7位には「パープルタウン~You Oughta Know By Now~」、「想い出のスクリーン」がランクイン。前者は、アメリカでの留学体験から作曲に至ったようだ。
「JALのタイアップが決まり、CMに使われる部分に“ニューヨーク”というフレーズを入れる必要があり、留学先はロスアンゼルスだったのに、急きょニューヨークへ飛んだんです」
本作は、スケール感のある楽曲構成と海外キャンペーンの相乗効果で大ヒット。オリコンでは最高2位(TOP10入り11週)、さらに『ザ・ベストテン』(TBS系)では松田聖子「青い珊瑚礁」と田原俊彦「ハッとして!Good」に割って入り、2週1位を獲得、合計13週間もベストテン入りするロングヒットとなった。近年のライブでも終盤で歌われることの多い「パープルタウン」だが、その歌声は当時よりもさらにパワフルで驚かされる。
「今は1年を通してずっとライブで歌っているので、ライブ向けのアーティストになったのかもしれません。そのために毎日、身体を鍛えたり、食生活に気をつけたりしています」
そういえば、『ザ・ベストテン』では、当時司会だった久米宏が、八神がランクインするたびに、“こぶたちゃん”と揶揄するなど、毎週のように何かと彼女をイジっていたが……。
「本当に毎週イジられてましたね。“どうして私ばかり言われるんだろう、これから生放送で歌うのに……”って思っていました。それで、今から数年前、久米さんのラジオ番組に呼んでいただいた時に、その理由を尋ねてみたんですよ。そうしたら、好きな女の子をいじめちゃう癖があったんですって。でも、山口百恵さんには、デレデレしてましたよね! そこをツッコめばよかったなあ(笑)」
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