「舞台できなくてごめんな。この借りは必ず返す」…「侍タイ」山口馬木也が明かした日本一有名な“仕事人”俳優の凄み

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「この借りは必ず返す」

 山口には忘れられない言葉がある。藤田は亡くなる寸前まで「剣客商売」の舞台に立とうとしていた。病床で鼻からチューブが入り、点滴をしている藤田が山口にこう言った。

「舞台できなくてごめんな。この借りは必ず返す」

 まるで藤田演じる中村主水の「必殺仕事人」に出て来るセリフのようだ。

 山口が映画賞をいくつも獲得した「侍タイムスリーパー」は池袋の単館、シネマ・ロサ1館から上映がスタートし、異例の大ヒットで全国300館以上に拡大公開された。柔らかい関西弁が印象的な藤田は実は東京出身で、10歳まで池袋で過ごした。家があったのはシネマ・ロサの近く。山口は語った。

「藤田さんがお生まれになった場所から公開され、多くの賞をいただくことができ、あの時の言葉が『これかも』と思っています」

 60歳で60億円といわれた晩年の借金騒動のせいか、藤田の話題はなんとなく避けられがちだが、「この借りは必ず返す」という藤田の言葉には情愛の深さと苦労人の凄みが集約されている。

峯田淳/コラムニスト

デイリー新潮編集部

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