「JAは供給量を絞る可能性が高い」 備蓄米放出でもコメ全体の値段が下がらない理由 小泉進次郎氏の農水相就任に叔父は「予感が当たっちゃった」と歓喜

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【前後編の後編/前編からの続き】

 昨年の総選挙惨敗で選挙対策委員長を辞して以来、鳴りを潜めていた小泉進次郎氏(44)が“コメ担当相”として表舞台に復帰した。連日、メディアで備蓄米は「5キロ2000円」だと連呼。父親譲りのワンフレーズでアピールするが、専門家らは疑いの目を向けるのだ。

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 前編【「進次郎に変なことはさせない」 農林族のドン・森山幹事長が周囲に語る理由 小泉農水相が喧伝する「5キロ2000円」の落とし穴とは】では、農林族のドンである森山幹事長が進次郎氏を警戒する理由について報じた。

 農水省は5月26日、随意契約による備蓄米の売渡価格を公式ホームページで公表。平均〈10700円/60Kg〉としたほか、〈一般的なマージンで既存在庫とブレンドしない前提で試算すると、小売価格が2000円程度/5Kg(税込2160円程度)となる水準〉と説明した。備蓄米は大手流通業者を通じて販売が開始された。

「銘柄米の値段は変わらない」

 だが、専門家は「随意契約方式」が全体の米価引き下げに資するか、疑問を呈する。

 コメ問題に詳しい、宇都宮大学農学部助教の小川真如氏が言う。

「消費者にとってなじみのある、特定の品種や産地が指定されて商品化された、いわゆる銘柄米は、品種や産地が多様な備蓄米が放出されたからといって、必ずしも供給量が増えるわけではありません。すでに、備蓄米を使ったブレンド米の価格と銘柄米の価格で差が生まれています。平均価格で見ると、銘柄米の価格は、備蓄米による平均価格の押し下げ効果を打ち消すほど上昇しています」

 備蓄米が放出されても、関係のない銘柄米の小売価格は下がらないというのだ。

「銘柄米の値段は変わらない一方、国は備蓄米をこれまでの落札価格より大幅に安く販売するので、ブレンド米だけは一時期、極端に安くなるでしょう。しかしそれだけの、一過性のイベントに終わる可能性があります」(同)

「JAは供給量を絞る可能性が高い」

 元農水官僚でキヤノングローバル戦略研究所研究主幹の山下一仁氏もこう言う。

「銘柄米も含めた全体の値段を下げたいのならば、備蓄米の値段だけを2000円にしたところで意味がありません。価格は需要と供給のバランスで決まるので、結局は全体の供給量を増やさないとダメです。仮に備蓄米を放出して供給量を一時的に30万トン増やしても、JA側が今まで卸売業者に売っていた分を30万トン絞れば、全体の供給量は増えないんです」

 なぜ、備蓄米の供給を増やすと、JA側が供給量を絞る可能性があるのか?

「今年秋に収穫されるコメの確保に向けて、JAはすでに農家に対して前払いする概算金を去年と比べて3割から4割ほど引き上げて、一般的なコシヒカリで60キロ2万3000円という数字を示してしまっています。全体の供給量が増えると、2万3000円という概算金の価格が維持できなくなるのは明らかですから、高米価を維持したいJAは供給量を絞る可能性が高いのです」(同)

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