73歳のレジェンド漫才師、まさかのマクドCM 唯一無二の存在感が心にジワッとしみる理由

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厳しさと優しさ

 現在のオール巨人が、厳しさと優しさを兼ね備えた大御所漫才師として知られているのは、単に芸歴が長いからではない。常に舞台に立ち続ける姿勢、漫才の魅力を伝えようとする真摯さ、後輩に対する誠意と熱意――それらの要素が多くの人の心をつかんできたのだ。今回のマクドナルドのCMに起用されたのも、ただの話題性だけを狙ったものではなく、その誠実な人柄と深い信頼感が大きな役割を果たしている。

 マクドナルドは、家族連れや若者、お年寄りまで幅広い世代が訪れる場所だ。商品の魅力を伝えるには、親しみやすく、同時に信頼感のある存在が不可欠である。オール巨人が持つ穏やかで安心感のある語り口は、まさにマクドナルドのブランドイメージと重なっている。さらに、彼が舞台や「M-1」で見せてきた真剣勝負の眼差しや漫才への誇りは、マクドナルドが掲げる「変わらないおいしさ」「信頼できる味わい」とも重なる。

 CMの中でオール巨人が発する言葉には、漫才師としての歴史の重みがにじみ出ている。それは単に奇をてらっていて面白いというだけではなく、視聴者の心にジワッとしみる温かさを生み出している。

 オール巨人の起用は、漫才師としての半世紀の歴史の積み重ねがあってのものだった。マクドナルドのCMに映し出されるオール巨人の唯一無二の存在感の正体は、まさに漫才一筋の彼の人生そのものなのだ。

ラリー遠田
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)など著書多数。

デイリー新潮編集部

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