44歳夫の心がついに折れた…妻の「まさか」の実験提案 知り合って18年「ずっと振り回されてる」

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彼女と僕の決定的な違い

 晴也さんはそう言われ、返す言葉がなかったという。理屈としては、絵梨さんの言い分はわかる。だが納得はできない。彼は男女関係は1対1であるべきだと思っていて、それ以外の選択肢を持っていなかったからだ。

「そういう話を絵梨としたんですよ。そうしたら『男女関係ってセックスのこと? もちろん男女はそういうことをするけど、だからといって愛があるとか恋をしているとかは言い切れないよね』って。ああ、ここが彼女と僕の決定的な違いなんだと改めてわかりました。僕はやはり愛情がベースになければできないんですよ。でも彼女は3人でしようと言う人だから……。そう言ったら絵梨はあははと笑って、『仮定の話だけど、晴也と私がするセックスと、私が他の人とするセックスはまったく違うと思う。3人でするなら、またそれは別物だし』って。気持ちのありようもモチベーションも愛情も違う。いろいろな人と話すのと、いろいろな人とセックスするのと、たいして違いはないんじゃないかなと言うんです。セックスを軽んじているのか、あるいは特別な意味合いを持っているのか、そこは図りかねますけど」

 そういった話し合いを積み重ねてもいたが、もちろん結論は出ない。平日の絵梨さんの仕事外の活動については、晴也さんはまったく関知していなかった。聞いても答えるような絵梨さんではない。パートナーは相手のすべてを知っている必要はないと絵梨さんは言う。もちろん、晴也さんの平日の行動についてもいっさい詮索はしなかった。だから晴也さんも、絵梨さんを束縛するような言動はなるべく見せないようにしていた。

絵梨さんの「まさか」の提案

 絵梨さんとの関係そのものが悪くなっているわけではなかった。だが、晴也さんの気持ちが安定することはなかった。

「絵梨が男女関係に奔放ということではないんですよね。誰かに誘われると断れないようなタイプではない。つまりは彼女の好奇心が旺盛すぎるんだと思う。彼女の中では、これは遊び、これはスポーツ、これは単なる興味と分かれているようですし、実際にいわゆる浮気をしていたのかどうかもわからない。『した』とは言ってませんし。彼女のそういう考え方を僕が支持できなかったから、不信感だけが募ったのかもしれない。不信感というよりは不安ですけどね」

 昨年、絵梨さんはまじめな顔をして話したいことがあると告げた。

「なんだろうと思ったら、『晴也は私が他の男性と関係をもつのが嫌なのよね』と確認してきた。嫌というか、僕は信頼できるパートナーとは1対1の関係でありたい。そうでなければ信頼関係が育たないと思っていると言いました。すると絵梨は『わかった。晴也、私の友だちとセックスしてくれないかな』と言い出した。何を言ってるんだと気色ばむと、『あなたが誰かとしたとき、私、自分がどういう気持ちになるのか知りたいの』と言うんです。晴也だって、パートナーがいるのに他の人と肉体関係をもつのがどういうことか知ったほうがいいと思うって。絵梨の浮気告白なのかもしれません、確認してないけど」

 そんなふうに言われることじたいが屈辱だったと晴也さんは言う。そうでないとわかっていながら、やはり絵梨さんから軽く見られていると感じてしまう。人は自分が軽く見られていると思った瞬間、プライドが傷つくものなのかもしれない。

「もちろん、そんなことはできないと言いました。すると絵梨は、『お互いにしてみようよ。そうしたらもっといいパートナーシップが築けると思うの』と言うんです。彼女の理屈が僕にはわからない。でも絵梨はしつこいんですよ。何度も言ってくる。だから僕は絵梨ひとりでいい、絵梨だけでいいんだと声を荒げました」

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