「単純な逆上がりでも他の子と動きが違った」 コーチが見逃さなかった「冨田洋之」の秘めた才能 “栄光の架橋”で金メダルを手にするまでを本人が振り返る(小林信也)

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 最後の演技者・冨田洋之が鉄棒を見上げ、演技を始めた時、NHKの実況担当・刈屋富士雄は叫んだ。

「日本が誇る最高のオールラウンダー。冨田が冨田であることを証明すれば、日本は勝ちます!」

 2004年アテネ五輪の体操男子団体は、最終種目を残して、ルーマニア、アメリカ、日本がわずか0.1点差で首位を争っていた。

 日本の種目は鉄棒。米田功、鹿島丈博が着実な演技で得点を重ねる。アメリカ、ルーマニアにはミスが出た。冨田が普段どおり演技すれば金メダルが手に入る。...

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