最終回で真っ白に燃えつきた「あしたのジョー」はどうなったのか? 「ちばてつや」を歓喜させた“法医学者”の「まだ生きていますよ」

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詩の心も大事

 ちばさんはかつて、文星芸術大(栃木県)で学生に漫画を教えていた。また、いろいろな新人漫画賞の選考委員を務めて次代の漫画家を育てることにも余念がない。教えることで分かったのは、今の若い人はみな、絵が上手。プロ級の腕を持っている。だが、

「お話は分かりにくいな、という印象はあります。例えば友人とケンカをしてしまい、ちょっと寂しい気持ちになってしまう。その時、目の前にふぅ~っとトンボが飛んでいるのを眺めながら『ああ、なんであんなことを言ってしまったんだろう』と悔やむ――こういうのは“詩の心”ですね。漫画だけでなく、映画や小説から吸収することも大事ですが、詩の心を持つことも漫画づくりには大切なんです」

 最後に「戦後80年」の今年、ちばさんに戦争と平和への思いを聞いた。

「先の戦争に関して、日本は巻き込まれたのだとか、アメリカは虎視眈々と日本潰しを狙っていたとか、色々な説がありますよね。日本の軍部も本当はアメリカと戦いたくなかったという説もある。だからこそなんですが、本当のことを知りたい。日本だけでなく、世界中の資料や記録をきちんと調査して、本当はどうだったのか、これからも調べる必要があると思います」

 ウクライナにイスラエルなど、今も世界各地で戦争・紛争は起こっており、子どもや老人など、非戦闘員にも多大な被害が出ている。

「これも大きな問題だけど、戦争をやると、どこかに“儲かる”人がいる。戦争はいけない、してはダメだと分かっていても、損得で動く人に巻き込まれてしまう側面もある。しかし、私の子どものころと違って、今はネットで世界がつながる時代になりました。戦争は皆が被害者になるだけで、何もいいことはないのだという声が世界中で高まり、皆が声を出し合いネットで繋がって解決に向かうための方法がみつかるのではないか。将来、そんな時代が来ることを期待しています」

【第1回は「86歳にして現役! 漫画界のレジェンド『ちばてつや』が明かす“色っぽいストーリー”を描けなかった理由は『母親から説教をくらいましてね(笑)』」旧満州から引き揚げ、漫画家生活を始めた息子を最後まで見守り続けた偉大な母親の実像】

ちばてつや
1939年、東京生まれ。7歳まで旧満州(中国東北部)で過ごす。56年、漫画家デビュー。代表作に「ハリスの旋風」「1・2・3と4・5・ロク」「あしたのジョー」「おれは鉄兵」「あした天気になあれ」「のたり松太郎」、著書に『ちばてつやが語る「ちばてつや」』(集英社新書)、『ちばてつや自伝 屋根うらの絵本かき』(新日本出版社)など多数。80年からちばてつや賞選考委員。2024年、第72回菊池寛賞、そして漫画家として初めて文化勲章を受章した。

デイリー新潮編集部

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