「たすけて下さい この男の人わるい人」…未解決事件の「長岡京ワラビ採り主婦殺し」 ポケットに残された「ダイイングメッセージ」の謎
すさまじい暴行
この事件で特徴的なのは、被害者に対する暴行ぶりのすさまじさである。
B子さんは全身に約50カ所の皮下出血があり、これは拳で殴られるとか、足で蹴られるとかしたものと断定されている。また、首に片手で絞められたあとがあり、刃渡り18センチのステンレスの包丁は第四肋骨を切断して心臓から肺にまで届いていた。胸部に14センチも突き込まれていたのである。
A子さんも同様で、皮下出血は30カ所ぐらい。さらに肋骨が9本折れ、肝臓が破裂していた。鈍器などで殴られたのではなく、恐らく、仰向けに倒れている上から、膝とか足で蹴る、踏むなどしたのではないかと推測されている。さらに両手で絞め殺しているのだが、こういうことから、犯人は人並みはずれて力が強く、凶暴な変質者という見方が有力になった。
刃物を用意していたのだから、犯行は――殺人まで考えていたかどうかはともかく――計画的だったはずである。
女同士でワラビ採り
A子さんはスーパーの仲間の主婦たちと、何度か野山へワラビ採りに行っている。仕事の休みが木曜日なので、行くのは水曜日だった。犯人はそれを勘定に入れて、ネラっていたかもしれない。
もっとも、野山へは、家族連れはもちろん、女同士でワラビ採りに行く人は多いのである。
「あの山が怖いなんて思ったこともありません。痴漢が出たという話もまったくないし、迷うような山でもない。日曜日なんかは、ワラビ採りやタケノコ掘り、ハイキングなどで公園みたいになってしまうんです」(地元の中年の主婦)
犯人は、野山へは女性がよくやって来ることを知っていて、好機を待ったのであろう。不幸な2人の主婦を、獣道に追い込んでいることからも、犯人はまったくの行きずりというより、野山に土地カンのある男の可能性が強い。獣道の入口はわかりにくいし、ぐねぐね曲がっており、下から人が登って来ることの決してない、犯行には好都合な袋小路だということなど、実際そこに入ったことがある者でなければわかりはしない。
単独犯か複数犯か。事件の捜査はどのように進んだのか。すさまじい暴行の理由とは――。【後編】では、A子さんのジーパンに残っていた“ダイイングメッセージ”の詳細、そして浮かび上がった“不審人物”について詳述している。
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