江藤前農水相は「主婦の皆さま」の買い急ぎと過去に批判も…“異色の農家”が論破するコメ高騰の知られざる理由「猛暑で小粒化」「倒れた稲が雨に浸かる」
秋の大雨でも被害
倒伏しても田面が充分に乾いていればコンバインで刈り取ることもできる。問題なのは先ほど触れた通り、秋雨前線の活発化で雨の日が増えている点だ。
「近年、刈り取りの時期と秋の大雨が重なることが増えています。倒伏した稲が雨水に浸かると大変です。コメは種ですから、水に浸かったまま放っておくと発芽します。芽が出ると食味が悪くなるだけでなく、商品にもなりません。コメの等級は1等米から3等米、そして規格外の4段階で評価されますが、よくて規格外、条件によっては買い取りすらしてくれません。ここでさらに放置を続けると最終的にはカビが生えて腐ってしまいます。倒伏した稲が水に浸かる被害が増えているのは、農村の人手不足も背景にあります。JAの買い取り価格が安いので離農者は増え、後継はいない。さらに新規就農者も限定的です。高齢夫婦の2人だけというコメ農家も少なくなく、近所に助けてくれる農家は少ない。結果、刈り取りの負担が零細農家に重くのしかかっているのです」(同・木村氏)
稲の成長を見極めながら刈り取りの日取りを決め、人手不足に悩まされながら刈り取りを進める。買い取り価格が安いので穂肥を打って収量を取ろうとし、結果、倒伏する稲は近年増えている。人手不足、機材不足で刈り取りの適切な時期を逃し、延ばし延ばしになるうちに、秋の長雨に捕まり、コメが台無しになってしまった──こうした悲劇は珍しくないという。
江藤前農水相の間違った説明
コメの粒が小さくなったことや、倒伏が増えていることが収穫量の減少を招いている。そのためコメの品不足が起き、コメ価格の高騰を招いている──と木村氏は指摘する。
ところが江藤拓・前農水相は3月7日の大臣会見でコメ不足を否定。《生産量は18万トン余計に作っている。在庫も合わせると100万トン以上の余裕がある》と豪語した(註:農水省の公式サイトより)。コメは足りないどころか余っているというのだ。
コメは足りているのだから、コメ高騰は消費者に責任があるとの論理になる。江藤前農水相は特に《ご家庭を守ってらっしゃる主婦の皆様》が不安に駆られ、買うコメの量を増やしている。そのためコメの価格が上昇し、品不足になっていると指摘した。
これでは消費者に対する事実無根の“誹謗中傷”と批判されても仕方ないだろう。第2回【小泉農水相と元テレ朝・玉川徹氏が「農家の大規模化」で意気投合も…コメ作りを知り抜く異色農家は「どんなに働いても生活苦な“小作人”が復活するだけ」】では、コメ農家の大規模化が問題の解決にならないことをお伝えする──。
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