都心を低空飛行…羽田新ルート「地価への影響確認できず」は本当か 国交省報告に3つの疑問、独自調査で分かった真実

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品川区の取引価格1万件以上を独自に調査してみると

 国交省の報告書に納得できないならば、自分で調べるしかない。

 国交省の調査は、地価公示データに基づいている。では、建物の実際の取引データで分析すると、どのような答えが得られるだろうか。

 今回、対象に選んだのは品川区の中古マンションだ。品川区を選んだ理由は、新ルート直下に位置し、低空飛行の影響が特に大きいと考えたためである。

 分析に使ったのは、国交省の「不動産取引価格情報」だ。2016~2024年の四半期ごとの取引データについて、品川区の25地区、1万件以上を分析した。

 すると、驚くべき事実が浮かび上がった――。

実は新ルート直下では地価が一時的に下落していた

 結論から言えば、新ルート直下7地区で、新ルート運用開始(2020年3月29日)の前後に一時的な価格の伸び悩みや下落が見られたのである。図ではピンク色の円で示した箇所だ。

 たとえば、低高度で通過する勝島の平米単価は、運用開始前の2019年第4四半期に44万円まで下がった。また、東大井の平米単価は、運用開始に向けて伸び悩み、運用開始前後の第1四半期に71万円に落ち込んだ。

 品川区全体の平米単価が緩やかに上昇するなかで、明らかな下落傾向を見せているのである。

 その後の動きもまた興味深い。

 2020年第3四半期以降、平米価格は急回復する。特に大崎では2020年第3四半期に130万円に急上昇した。回復の一因として考えられるのは、2020年10月に決まった「大崎・五反田再開発」だ。都市計画が地価を押し上げたというわけだ。この部分は、国交省の報告書でも述べられている。

 新ルート開始当初は、騒音や落下物の懸念が強く、それが地価に影響した可能性が高い。ところが、年月を経るにつれ、住民の意識が変わるのも事実。

「今も飛行機の音は気になるけど、生活の一部になった」

 そうした住人の「慣れ」も、価格回復の裏側にあるのかもしれない。

「ゆでガエル効果」と言うと、少し意地悪かもしれないが――。

やはり新ルートの影響はゼロではなかった

 筆者の独自調査で分かったこと。それは、少なくとも国交省が「地価への影響確認できず」と言い切るのは無理があるということだ。

 再開発などの都市開発や、とりわけ都心での顕著な地価高騰のトレンドで見えにくくなっているだけで、「羽田新ルート」が地価に影響は与えた可能性はゼロではないのである。

 国交省には、結論ありきではない、住民の納得できる「誠実な調査」を求めたい。

 そして読者の皆さんには、国の調査結果を鵜呑みにするのではなく、ぜひ今回ご紹介したデータに目を向けて頂きたい。

【著者プロフィール】
マン点(まんてん) マンションアナリスト。一級建築士。20年以上続けている不動産ブログ「マンション・チラシの定点観測」の管理人
X(旧Twitter):https://x.com/1manken

デイリー新潮編集部

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