「ついに日産車の選手貸与がなくなった」…横浜F・マリノスを“経営危機”日産が手放す日 J2降格危機に「売ってもらった方が強くなる」との声も
名門チーム
現在、マリノスの勝ち点は11で、J1残留圏内の17位との差は8。夏前にして、既にJ2降格が現実味を帯びている。
マリノスは、Jリーグ、いや、日本サッカー界を代表する名門チームだ。プロ化以前は、日産自動車サッカー部として、1980年代に日本リーグで優勝2回。木村和司、水沼貴史、松永成立らの日本代表を擁し、サッカー界を牽引した。
1993年のJリーグ発足時には「横浜マリノス」として、10チームのオリジナルメンバーのひとつに。1995年にはJ1優勝。1999年には横浜フリューゲルスを吸収合併し、「F・マリノス」となる。2003年と2004年には岡田武史監督の下で連覇を果たし、2019年と2022年にも優勝を重ねた。優勝5回は鹿島アントラーズに次ぐ歴代2位で、その鹿島と共に、一度もJ2に落ちた経験がない。OBには川口能活、井原正巳、松田直樹、中澤佑二、中村俊輔ら日本代表選手が多数いるが、その名門が危機に瀕している。
本社ビルの売却も
そんな折も折、チームにさらに暗い影を落としているのが、親会社・日産自動車の苦境である。日産が2024年度決算で6000億円以上の赤字を計上し、内田誠社長は退任を余儀なくされたのは周知の通り。代わって就任したイバン・エスピノーサ社長は「Re:Nissan」なる計画を発表し、経営再建を進めている。既に報道では、横浜・みなとみらいにある本社ビルの売却や、神奈川県横須賀市の追浜工場などの閉鎖が取り沙汰されている。2万人もの人員削減も計画中と言われるほどの、大リストラだ。その一環として、マリノスからの完全撤退も囁かれているのである。
スタジアムの命名権も
リーマンショックが起きた2008年以降、やはり日産は苦境にあえいでいた。10億円と言われるマリノスへの資金提供を止めざるを得なくなり、マリノス本体も債務超過に苦しんだ。そんな折、当時のカルロス・ゴーン社長が採った施策のひとつがマリノス株の増資。引き受け先は前出のCFG。CFGは英プレミアリーグの強豪マンチェスター・シティなどを傘下に持ち、親会社はアラブ首長国連邦(UAE)の投資グループ「アブダビ・ユナイテッド・グループ」だ。このCFGがマリノスの株式19.95%を取得した。そして、そのルートで次々と有力海外選手を獲得。2019年、2022年の優勝に繋がった。そんな前例があるからこそ、今回の危機でも、株の売却が囁かれているのは当然。実際、気になる動きは既に出ている。
「今季のシーズン前でした。これまで、マリノスの若手選手に貸与されていた日産車を突然引き上げた。こんなことは過去の日産のリストラでもなかったことです」(同)。
また、マリノスの本拠地である「日産スタジアム(横浜国際総合競技場)」の命名権が来年2月で契約満了を迎える。
「スタジアムの所有者である横浜市との交渉は前回の2021年の契約更新の際も難航しました。命名権は5年契約総額6億円でまとまりましたが、日産が経営再建の最中だったこともあり、初めの3年間は年1億円、残り2年を年1億5000万円の“分割”でした」(日産スタジアム関係者)。
前回ですらそれだから、現状、日産の経営状態から見ると命名権契約の延長は未知数である。
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