「ものづくり大国・日本」を衰退させた大きな原因…「リーマンショック」「東日本大震災」よりも現場を激変させた“2004年の出来事”とは
日産自動車の事業縮小で思うこと
日本を代表する企業の一つである日産自動車が、世界に17ある車両生産工場を2027年度までに10に減らす方針を明らかにした。さらに、国内工場も神奈川県横須賀市の追浜工場と、同県平塚市にある日産車体・湘南工場の閉鎖を検討。カルロス・ゴーン元会長以来の大規模なコストカットに動こうとしている。
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東京商工リサーチによると、2024年12月時点で日産が取り引きしている国内企業は、計1万3283社。そのうち7605社(同57.2%)が資本金5000万円未満の中小企業だ。また、取り引き先は半年前の調査から762社減っているというが、うち610社が資本金5000万円未満だという。
閉鎖しようとしている神奈川県には、同社の取り引き先が全国で2番目に多い1757社ある。
筆者が家族で経営していた工場も、そんな日産と取り引きしていた神奈川県の零細工場の一つだった。各自動車や家電メーカー、そしてその下請企業から、彼らが製造した金型を預かり、ゴツゴツした機械目を鏡張りにビカビカに磨き上げる金型研磨業。職人35人の、大手が風邪を引いたら地の果てまで吹っ飛ぶような、小さな小さな町工場だった。
その大手である日産がこのほど、ゴーン時代以来最大級に風邪をこじらせ、またしても多くの下請工場が吹っ飛ばされそうになっている――連日のように報じられる日産の再建計画を目にするたび、あの頃の記憶がよみがえるのだ。
日本企業の衰退
周知のとおり、日本企業のなかで低迷しているのは日産だけではない。この20年、日本の大手メーカーは軒並み業績が低迷している。
一般社団法人「日本自動車会議所」の発表によると、2024年の各自動車メーカー販売台数は、トヨタ自動車グループが認証不正による出荷停止や品質トラブルで前年比3.7%減ながらもトップを維持するも、前年7位だったホンダは8位、日産は8位から9位、スズキは9位から11位に後退している。
一方、勢力を伸ばしているのが中国勢だ。
前年10位だった自動車メーカー、比亜迪(BYD)は今年7位。スウェーデンの自動車メーカー、ボルボを傘下に持つ吉利控股集団が11位から10位。11位にスズキを挟み、12位の長安汽車集団(前年15位)、13位の奇瑞汽車(同16位)が後を追っている(各社発表より)。
また、日経新聞とBCNの調査によると、かつて日本ブランドの代表的製品だった薄型テレビにおいては、中国家電メーカーであるハイセンス(海信)がシェア40.4%で1位。2位にソニーが9.7%で続き、中国メーカーであるTCLが9.5%で3位。このハイセンスとTCL両社の合計シェアだけで、49.9%に達するという。
実際、海外の家電量販店には、10年以上も前から日本製の電化製品が消えており、オフィスにずらっと並ぶのも隣国製のPC。国内では日本製が当たり前に映るかもしれないが、海外ではもはや「ちょっと高くても質のいい日本製」から、「安いのに質のいいアジア製」にシフトしているのである。
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