「私も買いました」とウソをついて… 旧統一教会で使われた「宝石・絵画」販売マニュアル 元信者がその詳細を明かす
元信者の証言
実は、それぞれの役割分担を明確にして契約させる手法は、現在の悪質なマルチ商法でも使われており、契約をさせるのに、非常に効率の良い手法なのかがわかる。それゆえに、多くの人が断り切れずに、多額のお金を出させられて、甚大な被害を生むことになったのだ。
信者を増やす布教活動は、教団にとって神の国実現のために絶対に行わなくてはならないことであり、2025年4月13日に、総工費500億円とも言われる「天苑宮」が韓国の加平にオープンして式典が行われたことからもわかるように、今も、人とお金集めの活動は続いている。
教団は、2009年のコンプライアンス宣言で「教団名を告げない形での布教はしない」としているが、取材のなかで、宣言以後も教団名を隠した伝道は続けられていたことがわかっている。
2023年に行われた、旧統一教会問題の国対ヒアリングのなかで、70代の元信者のAさん、Bさんが証言している。
Aさんは、2014年2月頃に統一教会とかかわり、2022年に脱会した。入信のきっかけは、統一教会だと身元を明かさずに一人の女性が尋ねてきたことだという。「家庭が幸せになるセミナーがあるのできてみませんか?」と誘われて信者となり、献金や物品購入で2500万円以上を払い、被害に遭っている。
1700万円以上の被害
Bさんも、2014年3月から統一教会とかかわり、2022年に脱会したが、「ある日、統一教会だと名乗らない女性が訪問してきて『悩み事、心配事はないですか?』と聞かれたので、二人の子供の結婚を願っていると話すと『家庭が幸せになる良い話がある』と誘われました。そこでは、子供たちが結婚して幸せな家庭を築くためには、まず霊界で苦しむ先祖の恨みをとく必要があると教えられました」と話しており、その後に1700万円以上を支払い被害に遭った。
特に1世信者はこの手法が染みついており、今後も教義に基づいたマニュアルの骨組みをもとにした形で、多くの人たちに対して組織的な勧誘を仕掛けて、多額のお金を出させる可能性は十分にあるといえる。
現在、高等裁判所に解散命令の審理は移っているが、マニュアルの存在や、元信者らの陳述書などを通じて、韓国本部の指示を受けた日本の教団が、組織ぐるみで布教やお金集めの活動をしてきたことは紛れもない事実であることがわかる。「信者らが勝手にやった」という詭弁はやめて、被害を与えた社会の前でしっかりと謝罪することが求められている。
【前編】では、布教のマニュアルについて記している。
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上記のマニュアルについて、旧統一教会に質問したところ、以下の回答が来た。
「当法人が公式的に作成したマニュアルはありません。当法人の信者個人が自らの経験に基づいて、伝道活動を行う新人の指導のため、そうした資料を作成した可能性はありますが、当法人は所持していません。一方、『着物や絵画などの高額商品の販売手法についてのマニュアル』について、当法人は物品販売等の収益事業は一切行っておらず、そうしたマニュアルを作成したことはありません」
教団名を告げない形での布教が、コンプライアンス宣言後も続いているのではないか、との指摘については、
「2009年のコンプライアンス宣言以降、当法人は教会施設での勧誘は当然のこと、信者らが自主運営するビデオ受講施設等においても、教育内容に当法人の教義(統一原理)を用いる場合、勧誘の当初からその旨を明示することを強く指導してきました。当法人は、そうした指導が順守されてきたものと考えています。なお、当法人に対して文部科学省が申し立てた解散命令請求に関し、同省が裁判所に証拠として提出した元信者らの陳述書の中に虚偽事実の捏造が複数含まれていることが発覚しています。貴誌が指摘する国対ヒアリング等における元信者の『証言』についても、精査すれば事実と異なることが多々あると思われます。元信者の『証言』を鵜呑みにするのではなく、客観的な事実を究明することが何よりも重要であると思料します」
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