【前編】ピン子もえなりくんも不在だった「AI橋田壽賀子」脚本の「渡鬼」 辛口コラムニストの本音評価は?
5月10日は朝ドラの金字塔「おしん」(NHK)や「渡る世間は鬼ばかり」(TBS)などで知られ、2021年に亡くなった脚本家・橋田壽賀子氏の誕生日だ。生誕100年を迎えた今年、その翌日にBS-TBSで放送されたのが「渡る世間は鬼ばかり 番外編」だった。彼女の遺作というわけではなく、AIが脚本を書いたのだという。東大理III入試の二次試験で合格点を取ったことでも話題のAI、果たして出来はどうだったのか。辛口コラムニストの林操氏に分析してもらった。(前後編の前編)
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【写真】ピン子・えなり抜きの“AI渡鬼”には誰が出てた? 実際の出演シーンをみる
アナウンサー:あの「渡る世間は鬼ばかり」の新作が放送され、しかも脚本を亡き橋田壽賀子さんではなくAIが担当したというので話題となっています。「渡鬼」といえばこの方、非国民生活センター・TV主席研究員の林操さんと一緒に考えます。
林:いや、ドびっくりしたよね。「幸楽」と「おかくら」が万博に出店、「渡鬼」メンバーが総出で夢洲に繰り出したらメタンが爆発したり、御影石が落ちてきたり、大屋根リングが炎上したり、兵庫県知事が乱入してきたりの事故に遭い、生き残ったのは角野卓造とえなりかずきだけで、死んだみんなはあの世で山岡久乃や赤木春恵、藤岡琢也や宇津井健に再会して大宴会……なんて展開、まったく予想してなかったわ。
アナ:テキトーなこと言わないでください! 全部デタラメじゃないですか。だいたい今回AIが担当したのはあくまで脚本だけで、CGで故人を復活させるような使い方はされていませんでした。
林:でも、小びっくりはしたでしょ、何を今さらの「渡鬼」の新作だもの。あのシリーズ、傑作良作佳作だったかはともかく、人気とパワーと物量はやたらとあったからねぇ。なにせ平成の30年間で最も放送回数が多い連ドラだったし。
アナ:連続ドラマとしては2011年、平成23年9月に最終回を迎えた第10シリーズで終わりましたが、その後も、まさに令和元年の2019年9月までスペシャルが続いて、特番まで含めた全話は511回だそうです。
林:平成の間の放映話数で第2位の「相棒」(テレビ朝日)が、今年3月に終わったシーズン23まで含めて確か全423回だから、令和分まで含めても「渡鬼」は抜けないかもしれないとして、その「渡鬼」から今さら新作が出てくるとは予想外だったよね。シリーズ最後になった3時間スペシャルが2019年、つまりは令和元年の9月放送だったので……
アナ:5年8カ月ぶりになります。
林:そうそう。連ドラにせよ単発スペシャルにせよ、シリーズとして続いていた間はオンエアの間隔は長くても2年くらいだったからさ。しかも今回は脚本をAIにやらせるって話でしょ。“メカ壽賀子”が爆誕ですぜ、「ゴジラ対メカゴジラ」風に言えば。オンエア当日は10分前からTVの前に正座してスタートを待っちゃったね、久々に。
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