あっちが先に当てたんやから、こっちは当ててええんや! 今季も飛び出した「報復死球疑惑」…過去にはコーチや監督が“暗に認める”発言も

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 5月7日の巨人対阪神の7回、中野拓夢が高梨雄平から背中に死球を受けると、スタンドから怒号が飛び交い、「やると思ったわ」の声も出た。中野は前日、三ゴロの際に一塁上で岡本和真と交錯。このプレーで岡本は左肘を痛め、前半戦の出場が絶望的になっていた。そんな矢先に、中野が報復にも思える死球……。岡本の負傷は一塁送球がそれたことがきっかけであり、状況的に中野が狙われたとは考えにくいが、“報復死球騒動”と疑われたプレーは過去にも多く存在する。【久保田龍雄/ライター】

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死球を巡り野村監督と長嶋監督が舌戦を交わす事態に

 監督が報復死球を認めるような発言をして問題になったのが、1994年5月11日のヤクルト対巨人である。

 前年から何度も死球をめぐって乱闘や騒動が相次いだ両チームの“遺恨対決”は、この日もヤクルトの先発・西村龍次が2回、村田真一の頭部にぶつけ、負傷退場させたことが騒動を再燃させる。

 そして3回、西村が打席に立つと、木田優夫から尻に死球を受ける。状況的に報復と思われても仕方がなかった。7回には、西村の内角高めにのけぞったグラッデンが、激怒してマウンドに向かおうとし、制止に入った捕手・中西親志の左目を殴打。両軍ナイン大乱闘の末、グラッデン、中西、危険球の西村の3人に退場が宣告される騒ぎになった。

 試合後、野村克也監督が「木田の(西村への死球は)1球は故意だ。あれが故意でなければ、故意なんてない」と声を荒げると、長嶋茂雄監督も「そりゃ、そこに行くことだってあります。目には目をです。ただし、頭はいけない。(投手を)即刻退場にしないから遺恨を残すんです」と反論した。

 その後、「目には目を」発言を聞いた野村監督が「それは大変な問題や。去年の古田(敦也)への死球も報復やったんやな」と怒りを倍加させた。この一件は最終的に不問に付されたが、セ・リーグは5月13日に緊急理事会を開き、危険球の適用に「故意・過失を問わず頭部に死球を与えた投手は退場」の条項が付け加えられた。“故意死球騒動”が野球のルールまで変えてしまった。

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