あっちが先に当てたんやから、こっちは当ててええんや! 今季も飛び出した「報復死球疑惑」…過去にはコーチや監督が“暗に認める”発言も
「これは完全に報復やろ」とファンの怒りの声が
両チーム合わせて3死球が記録される仁義なき“死球合戦”が繰り広げられたのが、2021年4月18日の阪神対ヤクルトである。
7回に阪神の3番手・岩貞祐太が2死無走者で村上宗隆の右腕、8回にも4番手・加治屋蓮が先頭の塩見泰隆の左腕にぶつけてしまう。直後、審判団が集まったが、警告試合の宣告は見合わせられた。
すると、直後の8回2死二塁、ヤクルトの5番手・梅野雄吾が、大山悠輔の腰付近に死球。1試合で3つ目ともなると、さすがに審判も見過ごすことができず、ついに警告試合が発せられた。
ネット上でも「これは完全に報復やろ」「大山もわかってたなこれ」など、ファンの怒りの声が相次いだ。
4月16日の同一カードでも、阪神の先発・藤浪晋太郎が山田哲人と塩見に死球を与えており、ヤクルトは2試合で計4死球の災難。しかも、ぶつけられたのはいずれも主力打者とあって、高津臣吾監督も「故意ではないと思うけれど、あまり多いと気分は良くないね」と話していた。
冒頭で紹介した巨人・高梨もそうだが、与死球率の高い投手がいるチームには、この種の騒動がついて回るようだ。
「あれは見てわかるとおり、完全に当てに行ってるよね」
執拗な内角攻めの直後、「当ててもええんや」のコーチ発言が問題になったのが、2022年9月12日のDeNA対ヤクルトである。
1対7とリードされたヤクルトの8回攻撃中、4番・村上宗隆がエスコバーから右太ももに死球を受けたことが事件のきっかけだった。三冠王を狙う強打者のアクシデントに、場内は騒然となる。
苦悶の表情を浮かべた村上はエスコバーを睨んだあと、一塁側のDeNAベンチに何事か罵声を浴びせた。
エスコバーは8月28日の同一カードで、村上に右翼席に飛び込むシーズン49号を被弾しており、半月前の意趣返しと思われても仕方がなかった。一塁に歩いた村上は、大事を取ってその裏の守備から交代したが、今度は直後のDeNAの攻撃中に再び不穏な空気が漂う。
1死一塁で3番・佐野恵太が打席に立つと、この回から登板した久保拓眞が2球続けて内角低めにシュートを投じたあと、3球目も内角をえぐるシュート。思わず佐野は後方に大きくよろけてしまう。
時を同じくして、三塁側ヤクルトベンチの森岡良介コーチから「内角行け~っ!」「当ててもええんや、こっちは」などと大声の野次が飛ぶ。これに対し、DeNAベンチからも大和が「黙れ!」と言い返した。
警戒した佐野はカウント3-0から打席を大きく外したが、久保はその後も3球続けて内角シュートで攻め、佐野を一直に打ち取った。
ヤクルトOBの上田剛史氏は翌13日にユーチューブチャンネルを更新し、「当然、味方の軸となる奴がやられたら相手の軸になる奴に行くんだよ。基本的には。DeNAとなったら、今一番率(打率)を残しているから佐野選手になっちゃうけど。あれは見てわかるとおり、完全に当てに行ってるよね。狙って。報復だよね」と解説した。
一方、森岡コーチも試合後にインスタグラムを更新。「僕が相手ベンチに口にした言葉は事実です。それによって佐野選手にもストレスを与えてしまいました」と自ら野次を飛ばしたことを認めるとともに、「不快な思いをさせてしまい、そして落胆させてしまい大変申し訳ありませんでした」とファンに謝罪した。
報復かどうかはともかく、死球は一歩間違えば選手生命にも影響しかねないだけに、今後も死球をめぐる騒動はなくなりそうにない。
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