“悪の帝国”「ドジャース」の“金満補強”に「待った」をかけるか…MLBで「サラリーキャップ制」導入問題が再燃した理由
MLB主導で導入?
フリーエージェント市場において、特定チームの独走にブレーキを掛ける方法として、サラリーキャップ制を導入してはどうかという意見は、これまでにもあった。しかし、選手年俸に上限が設けられるため、同制度が話題になるたびにメジャーリーグ選手会が猛烈に反対してきた。しかし、今回は選手会が猛反対するだけでは「否決」にならないようだ。実は、MLBコミッショナーのロブ・マンフレッド氏(66)も、同制度の導入論者なのだ。
「22年オフに更新されたオーナー陣と選手会の現労使協定の効力は、26年12月1日に失効します。26年オフに新労使協定が結び直されますが、今のところ、何が話し合いの焦点になるのか分かりません。前回は最低保証年俸の金額、ぜいたく税の上限ライン、あとは年俸調停に発展した選手に一時払いされるボーナスプールの新設が主題でした。ここ2、3年、オフの補強シーズンになるたびにドジャースの交渉のことが話題になってきたので、ドジャースの話は出るはずです」(前出・同)
モンフォートオーナーが「ドジャース批判」を公の場で展開したのは3月の開幕前だった。ロッキーズの地元紙「Denver Gazette」で「スポーツにはある程度の公平さが必要だ。なのに、今のベースボールの競争の不均衡は笑いを通り越すレベルにも達している」と、ドジャースの大型補強を批判し、さらに、
「ドジャースとは、何か変革が必要なことを示す最たる象徴だ」
と皮肉っていた。
「当時、ドジャースを応援する側の専門メディア『Dodgers Nation』でもこの発言が取り上げられました。『こんなことを言ってやがった!』というニュアンスで紹介されていましたが……」(前出・地元メディア関係者)
そして、今回のバド・ブラック監督とべンチコーチのマイク・レドモンドをダブル解任した騒動により、改めて取り上げられたのである。
米スポーツメディア誌「Sports Illustrated」では“3年連続でのシーズン100敗”が早くも見えてきた状況も加えて、「小規模市場のチームは、ドジャース、メッツ、ヤンキースなどのチームに比べて不利な立場にある。MLBの不平等なテレビ収入構造も原因になっており、小規模市場のチームはシーズンごとの収入が少ない」と、大型補強に打って出ることのできない状況に理解を示していた。しかし、こうも伝えていた。
「(ロッキーズのある)デンバーは小さな市場ではない。オーナーが資金を投じたくないとしているため、チームは競争力をつけるのにも苦労している」
オーナーは23年オフ、松井裕樹(29)などの獲得に成功したパドレスも非難している。91年のチーム拡張策でロッキーズのオーナーとなったが、その前は食肉加工会社の社長で“堅実な経営者”として知られていた。だが、アメリカの野球ファンは「チーム強化には大金も必要」と捉えており、オーナーを支持する声は増えていないそうだ。
「しかし、年俸の97%を後払いにした大谷翔平(30)とドジャースの契約に批判的な他球団オーナーも少なくありません。大谷が活躍すればするほど、次の労使協定でドジャースの補強が取り上げられる可能性は高まっていくはずです」(前出・米国人ライター)
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