「偽装難民、不法滞在のクルド人には厳密な対応を」 河野太郎元外相の言葉は重い

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解決策はシンプル

 筆者は2024年から今年にかけて、川口のクルド人トラブルを取材している。

 現地のウイークリーマンションに滞在し、なるべく生活する市民の気持ちを共有するようにも努めた。「週刊新潮」に執筆した記事では、市長、市議会議員、クルド人の解体業者に現場の仕事を発注している解体業の経営者らにインタビューした。

 クルド人のヤード(解体業者の資材置き場)が密集する地域で早朝からクルド人とともに食事をして、その地域で暮らす地域住民にも話を聞いた。小中学生の年齢の外国人は、人道的な見地から在留資格がなくても日本の学校に通えるが、そうした子どもたちの授業を参観したこともある。

 市民の中には、クルド人に関する問題を深刻だと捉えている人は少なくない。問題の一つは、先ほども述べたように、その深刻さを表明することが難しい点である。

 しかし、これは川口や埼玉に限った問題ではない。よくない前例をつくると、全国各地の自治体で在留資格をもたない外国人が住んで働く。結果としてたとえば事故やら暴行やら暴動やらが増えるのが望ましくないのは言うまでもない。

 解決策はシンプルなはず。在留資格を持たない外国人を籍のある国へ戻す(在留資格を持つ外国人とは、双方に無理のない共生の道を常に探る)。とくに、事件当事者はすぐに強制送還する。いずれも河野氏が指摘していたことである。こうした基本を徹底してほしい。

 これらの問題は地方自治体だけで対処できるものではなく、国が動くべきことである、というのは市長も市議会議員も口をそろえて指摘していたことだ。

 前述の未成年女子に暴行をはたらいた在留資格のないクルド人は一度逮捕されたにもかかわらず、強制送還されていなかった。そのまま川口で暮らし、また別の未成年女子に暴行をする事件を起こしたのだ。なぜ、逮捕された在留資格をもたない外国人がそのまま川口で暮らしていたのか。理解しがたい。

河野氏の突破力に期待

 川口でクルド人に接触すると、人懐こいタイプが多いことがわかる。クルド人経営のケバブ店で食事をしていると、アイランという羊のヨーグルトでもてなしてくれた。ヤードの中の食堂にいると、チャイをトルコ流にブレンドしてくれた。

 日本人の妻やガールフレンドを持ち日本語を話せるクルド人たちは笑顔で話しかけてくる。彼らが暴動を起こしたり、日常的に迷惑行為をしたりするようには見えない。人種によって決めつけるのが悪いことは当然だろう。

 だからといって、放置してはいけない。日本人にも善人も悪人もいる。クルド人にも善人も悪人もいるのだろう。人柄ではなく、日本のルールに則ってジャッジしなくてはいけない。

 文化の違いも大きい。山岳地帯で暮らしているクルド人は、悪気なくトルコの山のままの生活を川口で行っているのではないか。だから、日本人には違和感があるような振る舞いをしてしまうのかもしれない。そんなクルド人と日本人の文化の違いの溝を埋めるには時間がかかる。

 無用な対立を深めないためにも、今はまず、目の前で起きている現実的な問題を解決する必要がある。在留資格を持たない外国人は早急に自国へ帰すべきだろう。

 河野氏は、時にX上での発言で物議を醸しながらも、強い突破力で政策を実現してきた人物だと思う。外務大臣まで経験した河野氏の「入管職員をしっかりサポートしながら、不法入国、不法滞在、不法就労の撲滅に向けて引き続き努力しています」という言葉は重い。これが選挙向けのものではないと期待したい。

石神賢介(いしがみけんすけ)
ライター。1962年生まれ。大学卒業後、雑誌・書籍の編集者を経てライターに。人物ルポルタージュからスポーツ、音楽、文学まで幅広いジャンルを手がける。著書に『57歳で婚活したらすごかった』(新潮新書)など。

デイリー新潮編集部

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