羽田の駐車場、富士山の山小屋で「予約枠転売ヤー」が増加 嵐ラストツアーでも?仕入れリスク無しの悪質手口とは

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嵐ラストツアーでホテルの予約枠転売が大流行!?

 もう少し身近なところでは、ホテルの予約枠の転売があるという。

「昔から多いのは、日本在住の中国人が中国人観光客をターゲットにした予約枠転売です。需要が集中する2~3月の春節と、10月の国慶節を狙い、予め中国人に人気の高い観光地のホテルを押さえておいて、中国のSNSである『小紅書(RED)』で取引するのです」(奥窪氏)

 ホテル予約の転売もまた、転売ヤーにとっては仕入れの要らない“おいしい商売”と言える。

「これができてしまうのは、日本のホテルでは名義変更が柔軟にできるからです。表面上は名義変更ができないホテルでも、“私の名前で予約してしまったんですが、本当はお客さんのための部屋なんです”などと説明すると、対応してくれるケースが多い」(同)

 キャンセル料の規定が“親切設計”なこともアダとなっている。

「多くのホテルではキャンセル料が発生するのが2日前や3日前。もし転売できなくても、キャンセル期限までに手放してしまえば、転売ヤーの懐は痛みません」(同)

 奇しくも先日、嵐のラストツアー開催が発表され、一部の暴走したファンには、独自にコンサート日程を予測してホテルを仮押さえする者まで現れているようだ。

「これもキャンセル無料の成せる業と言えます。現時点で複数の客室を仮押さえしておいて、もし予想が当たったらファンのコミュニティ内で転売し、予想が外れたらキャンセルしてしまう、ということも道義上はダメでも理論上は可能でしょうね」(同)

予約枠の転売は他のジャンルにも広がっていく…?

「予約枠転売ヤー」が増加する背景には、予約システムの利便性向上がある。

「ネット予約がどんどんスムーズにできるように改良されたことで、予約の転売もまた簡単になってしまった側面があります。加えてSNSの隆盛によって素人でも気軽に取引ができるようになりました」(奥窪氏)

 もはや仕入れリスクすら取らなくなった転売ヤーたち……。

「日本の色々なルールが、人の善意の前提に立つという“性善説”では通用しなくなってきています。ホテルのキャンセル規定も予約枠の転売を想定して設定されているルールではありませんからね。昔のダフ屋をはじめ、日本では転売はどこか“恥ずかしいこと”という社会通念がありましたが、今はネットで簡単に取引ができ、そうした考えも薄れてきています」(同)

 今後、予約枠の転売は更に広がっていく可能性も考えられる。

「事前予約が必要な富士山の山小屋や、タワマンの購入権などなど、需要が集中するところに予約枠転売ヤーは現れます。例えば“予約半年待ち”といった人気飲食店の予約枠転売なども、今後問題になる可能性がありますね。2人で5万円くらいかかるような人気店の今週末の予約枠が5000円で買える、と言われたら買う人はいくらでもいるでしょうし……」(同)

 こういった転売を防ぐためには、予約システムをより厳格にする必要がある。例えば、予約者の名前変更を禁止したり、キャンセル料金を高く設定したりすることが考えられる。

「ただ、そうした対策は一般の利用者にも大きな影響を与えてしまいます。結局のところ、需要と供給のバランスが崩れたところに、常に転売のビジネスが生まれてしまう社会構造が出来上がってしまった以上、根本的な解決はなかなか難しいかもしれません」(同)

デイリー新潮編集部

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