お笑い界随一のインフルエンサー 粗品の「1人賛否」がすごすぎて、バズリまくる理由

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「全自動批判ループ」を逆手に

 現代のSNS文化では、誰が何を発言しても、それに対する批判や罵詈雑言がついて回る。その中には低レベルな悪口や理不尽な揚げ足取りも含まれている。

 粗品はそんな「全自動批判ループ」の状況を逆手に取って、1人でその状況全体を再現することで笑いに変えている。誰もが批判されることを前提に発言しなければいけない時代に、責任を回避しながら複数の意見を同時に言って、それらを面白く見せるという離れ業を演じているのだ。

「ytv漫才新人賞決定戦」の審査員を務めたときにも、粗品の審査コメントが際立っていたのは、彼がさまざまな切り口で出場者のネタを評価して、それらを踏まえた総合的な評価を下すことができていたからだ。おそらく、彼にはあらゆる物事を俯瞰的に見るような「神の目線」が備わっている。ニュースに対する分析においてもこの能力を発揮することで「1人賛否」は成り立っている。

 粗品の「1人賛否」は、単なる毒舌ではなく、SNS以後のメディア状況を前提にした新時代の話芸である。粗品の発言が大きな話題になるのは、彼が誰よりも時代の空気を敏感に察知して、質の高いパフォーマンスを見せているからなのだ。

ラリー遠田
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)など著書多数。

デイリー新潮編集部

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