事なかれ主義の学校に「元ニート教師」が喝! 広瀬アリスの“適温な演技”が見どころの「なんで私が神説教」レビュー
私立学校の現実。子供の数が減り、定員割れ必至で、門戸を広げたら学力は低下。問題の多い生徒も増え、学校の評判はガタ落ち。トラブルを最小限に抑えるため、生徒に対しては「怒るな、褒めるな、相談乗るな」をスローガンに、教師は波風立てずに事なかれ主義を強いられる。結果、生徒は教師をなめくさり、信用もしない。そんな世知辛い設定にぶちこまれるヒロインだが、熱血でもすご腕でもない。ワケあって会社を辞め、無職に。2年のニート生活を経た後に、なぜか教壇へ。教育に無関心なまま、憂鬱(ゆううつ)な教員生活を送るハメに陥る麗美静(うるみしずか)を広瀬アリスが冷めた態度と心の声多めで好演。学園モノが得意な日テレの「なんで私が神説教」の話である。
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学園モノが得意ではない私が興味を持ったのは、アリスの塩対応が適温だったから。根は真面目でまっとう。本来は負けず嫌いだったが、無駄なエネルギーを使って争うよりも、自ら身を引くほうが収まると思うようになったようだ。会社員時代に何があったかはまだ不明だが、賢い人である。
静の母(堀内敬子)の親友で、私立学校の校長をしている加護京子(木村佳乃)は、静の教師としての適性を見抜き、半ば強引に教壇に誘う。生徒に遠慮することなく説教できる人材だ、と。
現実として、説教自体は難易度の高い行為になっている。たとえ中身が正しかったとしても、ハラスメントと捉えられがち。余計なお世話とか、上から目線とか、時代が違うなどと、説教した側がたたきのめされる時代でもある。神説教とタイトルでうたうのだから、さぞや見事な説教なのだろうと期待して観た。当たり前のことを冷静に伝えるアリスの説教、悪くない。しかもスマホにカンペを用意し、丁寧に読み上げるスタイルだ。生徒たちに愛も関心もないけれど、分かりやすく「今がすべてではない」と伝える。そうなんだよ、高校なんてたった3年、長い人生の中では一瞬なので、いなしてこなせって話なの。
ま、ちょっと生徒たちも配慮とか熟考とか、いろいろと足りない子たちでもある。つい前クールの「御上先生」(TBS)の生徒たちの成熟度と比べちゃうが、現実にはこっちがマジョリティーだ。豊嶋花や新井美羽ら、子役出身の俳優が固める生徒の演技は安定感がある。
で、教頭(小手伸也)が旗を振って進めてきた学校改革委員会は、事なかれ主義&無関心。トラブルを静に押し付けてくる厄介さもあったが、無関心という意味では根っこが同じマインド。
ところが、昼行灯(ひるあんどん)教師だった森口(伊藤淳史)が実権を握ってから静の苦悩が始まる。森口は理事長の甥で、元はゴリゴリの経営コンサル。学校経営を安定させるために貧しい家庭の生徒や問題の多い生徒を退学に追い込めというのだ。私立学校の断末魔、という様相へ。
経営不振で本末転倒の拝金主義や客の取り合いになるのは教育分野だけじゃない。医師や弁護士などの士師業でも、ある種のサービス合戦で本質や本懐がゆがんでいく時代。そこが令和っぽいなと思って凝視しとる。








