トランプ関税「対米包囲網」失敗で高まる中国の政情不安リスク…他国は中国製品の「違法な迂回輸出」阻止に躍起
態度を軟化させ始めた中国
米国との貿易協議を頑なに拒否していた中国が、態度を軟化させ始めている。5月2日には、米国から提案された貿易協議の開始について「現在検討中」と発表した。
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ウォールストリート・ジャーナルは5月2日、「トランプ米政権が問題視する合成麻薬フェンタニルの米国流入について、中国政府は対応策を検討している。このため、王小洪公安相を米国に派遣する案が浮上している」と報じた。中国側がフェンタニル問題を糸口にして、米国との交渉開始を望んでいる証左なのだろう。
中国側は依然として「交渉を望むなら関税を直ちに引き下げよ」という姿勢を崩していないが、ここに来て柔軟路線に転じたのには理由がある。
中国製品の迂回地になることを警戒
最初に挙げられるのは、中国が仕掛けた対米包囲網が失敗に終わったことだ。
習近平国家主席は4月中旬に東南アジアを歴訪したが、成果はさっぱりだった。むしろ、アジア各国は中国製品の迂回地になることを警戒している。
習氏の最初の訪問地だったベトナムでは、政府が米国への違法な迂回輸出(米国の貿易規制や関税を回避するために第三国を経由する輸出)を取り締まるよう通達を出した。最も親中とされるカンボジアでも、政府が米国向けの原産地証明を強化している。
東アジアでも、原産地を韓国産と偽って輸出される外国製品が急増中として、韓国政府が中国製品の迂回輸出に対する取り締まりを強化した。台湾政府は原産地申告の署名を義務化するなど迂回輸出防止策を打ち出している。
国際社会は中国製品の流入阻止に必死
中国は米国と対立を深める欧州にも秋波を送っている。だが、欧州諸国は米国向けの中国製品が大量に押し寄せてくることへの備えを加速している感が強い。
トランプ政権が少額小包への関税を引き上げたことを踏まえ、フランス政府は中国のネット通販業者からの小包に手数料を課す措置を導入しようとしている。英国政府も、135ポンド以下の輸入品に対する関税を免除する「少額輸入制度」の見直しを発表した。
ブルームバーグは4月30日、欧州連合(EU)が米国に新たな貿易協定を提案する予定であることを報じた。提案の中には「中国の過剰生産・デフレ輸出問題に関して米国と協力して対処する」との内容も含まれているという。
このように、国際社会はトランプ関税がもたらす自国への悪影響を回避するとともに、米国市場から締め出された中国製品の自国への流入阻止に必死なのだ。
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