世の中に「阪神ファンは凶暴」のイメージを植え付けた「催涙スプレー事件」 地方球場での対阪神戦が10年間“出禁”になった大騒動とは

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地方球場で10年間、対阪神戦が中止に

 一方、中日の伊藤正一球団代表は「ルールを守って楽しく観戦するべき球場で、こういう騒ぎが起こってしまい、残念です。被害に遭われた人たちには気の毒であり、お見舞い申し上げます。事実関係がはっきりしないので、わかり次第、検討したいと思います」とコメントし、岐阜北署も傷害事件の容疑で捜査を開始したが、犯人は今なお判明していない。
 
 この事件以後、地方球場で行われる中日主催ゲームの阪神戦は、2013年6月25日の富山アルペンスタジアムまで10年間行われなかった。長良川球場での中日主催の阪神戦も、今に至るまで1度も組まれていない。一部の心ないファンの行動が、阪神ファン全体のイメージを悪化させる結果を招いた。
 
 ちなみに長良川球場では、1997年6月5日の中日対広島で、ストライク判定に異を唱えた大豊泰昭が退場を宣告されたことがきっかけで、中日時代の星野監督らが米球界から派遣されたマイク・ディミュロ審判を取り囲んで罵声を浴びせる騒動が勃発。その後、「自分のアンパイアとしてのキャリアの中で経験したことのない恐怖感を覚えた」というディミュロ審判は辞表を出して帰国している。
 
 また、2004年6月30日の中日対広島戦でも、1点ビハインドの9回1死満塁のチャンスに三ゴロに倒れた谷繁元信が一塁線をまたいで走り、悪送球を誘発したことを理由に守備妨害を取られ、併殺が宣告された直後、落合博満監督が猛抗議。スタンドの中日ファンが興奮してベンチに乱入するなど、20分以上も騒動が続いた。

 年に1、2試合程度しか試合が組まれない地方球場にもかかわらず、記憶に残る騒動が多いのも、不思議なめぐり合わせである。

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 第1回から第4回の記事では、他にもまだまだあった、暴徒化したファンによる数々の“暴動事件”を取り上げている。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新著作は『死闘!激突!東都大学野球』(ビジネス社)。

デイリー新潮編集部

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