87歳で新作ドラマに出演「伊東四朗」 悪役から物の怪まで演じる「大御所」の味わい

  • ブックマーク

 ペリー荻野が出会った時代劇の100人。第31回はコメディアン出身ながらNHK朝ドラの金字塔「おしん」(83~84年)で厳格な父・作造役を演じ、シリアスな俳優としてもその名を高めた伊東四朗(87)だ。

 ***

 日本喜劇界の大御所である伊東四朗は、長年、時代劇でも活躍している。

 そのキャリアは60年を超える。大学生協の職員を経て石井均の喜劇劇団に参加、その後、三波伸介・戸塚睦夫と組んだ「てんぷくトリオ」で人気を博す。資料で確認できる最初の時代劇出演は丹波哲郎・主演の「宮本武蔵」(61~62年、フジテレビ)。NHK大河ドラマには「天と地と」(69年)に上杉謙信(石坂浩二)の側近・鉄上野介役で初出演している。

 70年代から80年代には杉良太郎の主演シリーズに数多く登場。「一心太助」(71~72年、フジ)では威勢のいい魚屋・太助(杉)が慕う大久保彦左衛門(志村喬)の用人・笹尾喜内役で、事件が起きるたびに右往左往する。また「右門捕物帖」(82~83年、日テレ)では主人公・近藤右門(杉)のライバル・あばたの敬四郎こと村上敬四郎役で、的外れな推理でドタバタする。コメディリリーフとして存在感を示した。

 現代劇では、郷ひろみ、樹木希林らが出演したコメディ色の強い「ムー」(77年、TBS)で足袋屋の親父を好演。同時期、バラエティでは、小松政夫らと「みごろ!たべごろ!笑いごろ!」(76~78年、テレビ朝日)で電線音頭ブームを巻き起こしている。

公開コメディの傑作

 90年代は冠番組「伊東家の食卓」(97~07年、日本テレビ)が最高視聴率28・8%を記録するなど、幅広い世代から慕われるお父さん的存在に。また、「コメディーお江戸でござる」(94~99年、NHK)では座長を務めた。この番組は公開収録の形式で、てんぷくトリオが数多く出演した「てなもんや三度笠」(62~68年、朝日放送)を思い出させた。中でも傑作だったのは、98年正月に放送された特別版「コメディお江戸でござる オールスター忠臣蔵まつり」だ。

 伊東は商売熱心なお由美(野川由美子)、息子の和吉(えなりかずき)、金太(桜金造)らと働く瓦版屋のとぼけた主人・徳兵衛。赤穂浪士が吉良邸に討ち入ったことを瓦版にすると大うけ。和吉たちは大石内蔵助(高橋英樹)が預けられている細川邸に変装して潜入を試みるというお話。劇中劇「いろは忠臣蔵」では浅野内匠頭役の滝沢秀明が吉良上野介役の坂上二郎を見て思わず「二郎さん……」とつぶやいたり、大石主税役の仲間由紀が大まじめに少年役をやったり。坂本冬美と五木ひろしの珍妙なお軽・勘平、団しん也のものまねなどが笑わせる。圧巻は瓦版の書き屋役・三波春夫の「俵星玄蕃」の熱演。あの「さ~くさくさくさく」という名調子が観客を魅了した。

 私は取材で、伊東にこの番組への思いを聞いた。

次ページ:悪役から物の怪まで

前へ 1 2 次へ

[1/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。