「人格否定発言」から21年 雅子皇后を悲嘆させた「朝日スクープ」と宮内庁の思惑

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雅子妃の流産

 平成11年12月、雅子妃に待望のご懐妊である。しかし、喜びも束の間、朝日新聞のスクープ後、まもなく雅子妃は流産したのだった。

「夫妻が記者会見で思いを極めてストレートに表現するようになったのは、雅子さまの流産後にあった皇太子の誕生日会見からでした」

 と振り返るのは、さる皇室ジャーナリストである。

「皇太子は“極めて遺憾”という率直な言葉や、従来では用いない言い回しをするようになりました。ご懐妊を報道されたことが、きっかけとなったのでしょう。雅子さまが懐妊したことは、側近中の側近しか知らなかったことです。その情報が漏れたのですから、両殿下ともに深いショックを受けられたのです。そのため、側近に対して信頼することができず、直接国民に自分たちの思いを伝えることが必要だと思いはじめたのでしょう」

 ことあるごとに周囲からお世継ぎを期待される雅子妃にとって、自らの役割は出産しかないのか、と人格を否定されたかのように受け取るのも無理はなかったのである。

 先の皇室ジャーナリストはこんな感想を漏らす。

「皇太子は、雅子さまの容態がここまで悪くなった背景を世間に知ってもらいたいという思いがあったのでしょう。そしてここまで言いますよ、という姿勢を見せたかったのではないか。あの会見の様子は、結婚当時に“お守りする”と言った約束を守る形のものであり、雅子さまにも伝わっているはずです。皇太子の発言のいわんとするところは、特定の個人を指したものではなく、自分たちに押しつけられる宮内庁全体の雰囲気に対して、さらに歴代の長官や天皇、皇后両陛下への思いもこめられたものであると思います」

 天皇陛下のご学友で、元共同通信記者の橋本明氏はいう。

「殿下のお言葉は、宮内庁に対するきつい意思表明です。皇室外交という可能性を封じて、雅子さまを子供を産むマシーンとしていること、それが人格の否定です。それは、ひとえに現行制度の下で、1人の女性に男児を産んでもらうことを皇室の繁栄とする、という宮内庁に問題があります」

 元宮内庁長官の藤森昭一氏はこう答える。

「殿下がお戻りになる24日を待って、直接、真意をお伺いしようと思っています。それまでは憶測は避けなければいけないと思いますが、本当の解決に向けて努力を結集しなければいけないと思っています」

 ***

 こうした努力も空しく、この後の7月、雅子妃の病名は「適応障害」と発表され、療養生活は続いた。そして、皇后陛下となられた21年後の今でも、回復の途上にこそあるものの、療養は継続中だ。

 世間に大きな衝撃を与えた天皇陛下の「人格否定発言」は今なお、新しい時代の皇室のあり方について、強く国民に問いかけている。

【前編】では、雅子妃の「キャリア」が、誰によってどのように否定されたのか、その詳細を述べている。

デイリー新潮編集部

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