「オサマ・ビンラディン急襲作戦」を描いた映画2本の共通項とは…なぜかGWに多い“映画化された作戦”
見どころは特殊部隊の“仕事ぶり”
【1980年4月30日~5月5日:駐英イラン大使館占拠事件】
駐英イラン大使館が6人のイラン人テロリストに占拠され、5月5日にSASこと英陸軍の特殊空挺部隊が突入、制圧した事件を題材としたのが「ファイナル・オプション」(1982年)。SASは第二次世界大戦中に偵察と襲撃の部隊として編成され、2002年にドラマ「S.A.S. 英国特殊部隊」の大ヒットで知名度を上げた。
現在は対テロ作戦を含む特殊作戦を任務とし、ウクライナ軍を支える存在としても知られる。イラン大使館占拠はSASが国際的に注目された最初の事件で、本作でメガホンを取ったイアン・シャープ監督は当時、現場近くに住んでいた。事件を知ってすぐさま製作に取り掛かったそうだが、本作で占拠されるのは米国大使公邸、テロ集団は冷戦時代の反核派に置き換わっている。
本作の見どころが特殊部隊の“仕事ぶり”にあることは、作品を観れば明らかだ。元諜報員のジャーナリスト兼作家が最初のあらすじを書き、アドバイザーは元SAS。結局はSASも協力し、突入時にヘリで降下するシーンに“出演”しているという。
主人公のスケルン大尉を演じたルイス・コリンズも、陸軍に属していた俳優兼軍人。出演にあたって特別な訓練を受け、1983年にはSASへの入隊を希望したが、著名人であることを理由に断られた。どうやら本気の布陣で作られた作品と言えそうだ。
粛々とお仕事をするSAS
スケルン大尉がテロ集団の女性リーダーに近づき、集団に潜入する過程は、スパイものによくあるシーンが続く。ただし、強調されているのは冷静さ。ハリウッド映画によくある「愛してしまった敵側の美女」や「反対意見を叫ぶ面倒な同僚」といったドラマ要素は99パーセント排除され、“プロのお仕事”が徹底的に描かれる。
たとえば、拉致された人物の救出シーン。内偵担当が隣家と話をつけて機材を持ち込み、壁に穴を開けてカメラを仕込む。到着した突入部隊は映像で犯人の位置を確認すると、適量の爆弾で壁を吹っ飛ばし、犯人を瞬時に“クリア”して任務完了。「映画だからか」と思う反面、熟練の電気工が修理にやってきたかのような手際の良さは逆に説得力もある。
公邸突入シーンでも、ロープで降下した隊員たちが粛々と敵を“クリア”する。しかも制圧は早く、喜ぶシーンもない。“プロのお仕事”にこだわりすぎた結果、地味な映画になってしまった感は否めないが、粛々と仕事をする特殊部隊という描き方は新鮮だ。また、一枚岩でない英国政界を思わせる部分も、いかにも元諜報員が考えたストーリーだろう。
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