「実は中国との友好都市提携を断わったばかりで……」 和歌山「パンダ4頭返還」 地元・白浜町長が語る“一斉帰国”の深層

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期限が来ると延長

 王子動物園の場合は、2000年に震災復興のシンボルとして「タンタン(旦旦)」「コウコウ(興興)」が貸与された。保護資金は一頭当たり年間25万米ドル。今の為替相場で約3600万円である。こちらも10年の貸与契約。その後、コウコウに繁殖能力がないことがわかり、2002年に代わりに二代目コウコウが貸与されたが、2010年に死亡している。タンタンの契約は2010年に5年、2015年にさらに5年、更新された。2020年になると、コロナ禍に加えてタンタンの病気が悪化し、契約はさらに半年、翌年からは1年毎に更新されている。2024年3月、タンタンは同園で死亡した。

 この2園の状況を見ると、貸与されたパンダは契約期間こそあるものの、期限を迎えると、日本側の要望に応じてか、延長される例もあるなど、柔軟な対応を受けていることがわかる。

 実際、アドベンチャーワールドのパンダも、1994年来日時の報道によると、10年の貸与契約だった。保護資金は2頭で年間130万米ドル。当時の為替レートで1億3000万円ほどだ。その後、報道がないために不明だが、その後もこの契約は延長されていたものと思われる。

 しかし、今回、2025年時になると、4頭すべてが契約の延長なし。アドベンチャーワールドのパンダは一気に0になるわけで、施設側は“目玉”が一夜にして失われる。そのショックは計り知れないことだろう。

報道で初めて知った

 一体、何があったのか。

 当のアドベンチャーワールドに尋ねたところ、「契約のことはお話しできません」と繰り返すのみ。

「私も報道で初めて知ったくらいで、まだ事情が呑み込めていないんです」

 そう語るのは、アドベンチャーワールドがある、和歌山県白浜町の大江康弘町長である。大江氏は和歌山県会議員、参議院議員を経て昨年、町長に当選した。アドベンチャーワールドは年間約90万人が訪れる白浜町の大きな観光資源。その目玉であるパンダの不在は町民や周辺の自治体の住民の生活に大きな影響を与えるが、それでも施設側から事前に報告は一切なかったという。

「その後、園長が報告に来ましたが、契約のことは中国との間でシークレットになっているとのことで、詳しいことは教えてもらえませんでした。ただ、その際、園長が言っていたのは、“10年前に契約が変わり、(その時点で結んでいた)契約が切れた時点で返還するということになっていた、と」

 一方で、前述のように上野や王子動物園では、その後も契約が延長されているから、中国側も施設によって対応を変えていることが推測される。

「返還の発表があった晩に、ある自民党の元大臣から連絡があり、GWに日中議員連盟が訪中を予定している。森山(裕)幹事長(会長)や小渕(優子・事務局長)さんも行く予定だから、その際に、契約延長をお願いしてもらおうか、との話がありました。ただ、アドベンの社長に聞いたところ、“政治的な動きはやめてほしい”とのことだったので、それも結局、なしになったのです」

 訪中した議員団は、日本への新たなパンダの貸与を要請し、大きなニュースとして取り上げられた。

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